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ごく一部の推理ゲームの歴史やらについて

こちらの記事、推理ゲームを推理する対象で分類するのは、とても面白く、記事の中で中心として取り上げられている【文脈】を推理するというのは、うまい言い方だなあと思っていました。
細かく気になる点はありますが、こういう観点の分け方はこれまで見たことなかったですし、ゲーム中に手に入る文章形式の情報と情報の間のつながりを推測するゲームのことを言い表すのに良い表現だなと思います。
(好みの問題と上述の気になる点で、僕が使うかはわかりませんが。推理の対象を問わず間を埋めるような思考をするのは日本語的には文脈を読むといっておかしくもないとか)

しかし、次の記事で2018年が推理ゲーム元年という表現と添えられた年表には、若干クエスチョンマークが浮かんでしまいます。
いや、大層な表現をしてしまいましたが、文脈を推理するゲームの仲間に入れてもらえそうな僕の好きなゲームが入ってない!ということが言いたいだけです。
ぶっちゃけた話、『推理ゲーム元年』という表現は、文脈を推理するゲームが2018年あたりから沢山出始めたということを強調していいたいだけでしょうし、そんなの気にしなさんなという話ではあるのですが、いい機会なので、推理ゲームに関して、数年前から頭にあったことをアウトプットしてみます。

書きたいのは2点です。
・テキストで入手した情報から書かれていない背景、情報を推測する推理ゲームについて(ちょろっと歴史)
・スペインで何故か盛り上っている推理ゲーム

・テキストで入手した情報から書かれていない背景、情報を推測する推理ゲームについて

たぶん【文脈】を推理するゲームに極めて近いんじゃないかと思うのですが、前述の記事でふれられていないので、別の表現にしています(ボードゲーム動画のTGGチャンネルではHAL99さんは、『本当の推理ゲーム』と表現されている類のやつです)。正確な定義は僕には判断できませんし。

こういったゲームの始祖が何かといわれれば、『シャーロックホームズ10の怪事件』であることは異論の余地はないかと思います。
以前記事も書いていますが、ざっくりな流れは↓な感じです。
・事件について書かれた本を使う(大きく分類すればゲームブックになるかと思います)。
・プロローグとして事件のあらましが依頼人などから説明をされるとともに、この事件で当てなければならない問題が提示される(犯人、動機、凶器など)
・プレイヤーは住所録などをもとに、事件関係者や警察関係者(死体の検死官とか)のもとを訪れ、話を聞く。
・事件の真相は(解答以外では)どこにも登場しないので、プレイヤーは聞いた話からこういうことが起きたんじゃないかなと推測/推理する。
・問題について回答を記載し、解答を確認して採点する(犯人が当たっていれば10点とかそんな感じです)
・調査で訪れた場所の数をホームズと比べて多い分を減点し、最終的な得点を計算する。
 (正解を推理するために訪れる必要がある(たぶん)最小数がホームズの訪れた場所の数になっています)

上記の通り、答えがどこにも書かれておらず、聞き込んだ情報から答えを推測するという点はもちろんですが、ゲームシステム的にも、高得点を取りたかったら聞き込みに様々な場所を訪れるのではなく、出来る限り訪問先を少なくして、妄想、もとい推理をよりはたらかせる必要がある、というどんだけ推理させたいんだという作りになっています。

まあ、色々なところを訪れて推理の裏を取るのも面白いんですが(余談ですが、どんな推理ゲームにせよ、その楽しさは、推理事態だけでなく、裏取りする方にもあると僕は思ってます)。

シャーロックホームズ 10の怪事件は、ゲームブックブームの1982年に発売され、1985年にSDJもとっていますし、同年に日本語版もでています。そして、このゲーム、単に昔に発売されたというだけでなく、継続して再版、リメイクされています(日本にいるとわからないのですが、決して過去の忘れられた作品ではないということです)。

具体的には、2011年のイスタリ版。これはフランス語だけですが、スペイン語や英語版が翌年以降に作成され、さらに追加のシナリオも2,3年続けて発売されていました(イスタリ版の英語版は2016年まで刷られていたとBGGにはあります)。
さらに2016年に発売されたスペースカウボーイ版は、こちらも発売当初はフランス語版だけですが、英語はもちろん、スペイン語やドイツ語やポーランド語、韓国語版などの多数の言語に訳されています(他のゲームもそうですが、沢山出ているように思える日本語版ですが、多言語展開しているゲームは日本語版は案外ないなと思うものが結構あります)。
加えて、同程度のボリュームの続編が2016年、2017年、2020年と継続して発売されています。

めっちゃテキスト量が多いので日本語版もない状況ではなかなか国内流通しないですが、継続して遊ばれている推理ゲームの名作だと思います。(国内ではさすがに30年以上前のものなので古書検索サイトである日本の古本屋さんなどで探しても数は多くないですが)。

しかも、単独の事件が面白いだけでなく、全10話がつながっており、小道具として使われる新聞は、第1話の時の新聞の内容が実は第5話の事件の真相を推理するための情報だったということがあるなど、今はやりのキャンペーンもの要素もあったりします。
売れるかはともかく、スペースカウボーイ版の日本語化、お待ちしております!(2022年には中国語版も出ますし!)

余談ですが、2018年に発売され前述の記事でも【文脈】を推理するゲームとして挙げられている、ディテクティヴやクロニクル・オブ・クライムも、遊べばベースは10の怪事件と共通のものを感じるかと思いますし、実際に、作者のインタビューやエッセイの中で両作品とも10の怪事件について触れられています。

参考:
Board games that tell stories(ディテクティヴの作者のひとりであるIgnacy Trzewiczekのエッセイ的記事):GDJ Detective - What we found in a shoebox.
クロニクル・オブ・クライム作者へのインタビュー

両作品とも10の怪事件がゲームブックであることの弱点、例えば、情報が冊子になっているので複数人で回し読みするには適していなかったり、ゲームとして遊ぶ際に選択肢が多すぎたり、解答の確認に向かうまでの行動がプレイヤー任せすぎたりする点をシステムによってカバーしている作品といえると思います(住所録を基に自分の考えだけで選択肢を作り上げる10の怪事件システムも楽しいんですが、選択肢をある程度、システム側で絞っても十分な楽しさがあると判断されたということでしょうし、実際にそこまで楽しさは損なわれていないように思います)。

そして、何故か触れられていないゲームとしてあげたいゲームがあと2つあります。

まず1つ目は「オリエント急行殺人事件ゲーム/ Orient Express」(1985)です。ブログ記事

オリエント急行内で起こった事件を乗客や乗務員に話を聞いて、話をつきあわせて謎を解くというゲームです。

移動がサイコロだったり出目次第で情報の公開/非公開が決まったりと昔のゲームにありがちな謎のゲーム性が追加されていますが、列車内を移動して色々な人に話を聞くというゲームの流れは大変楽しいです
(話の出来はそこまでよろしくないような)

全10話はいってますが、1話目が一番出来が良かったような覚えがあります。日本語版だと1話目が一番何言ってるかわからねえ(表現があいまい)ではありますが。

2つ目は、2015年に発売されたワトソン&ホームズです。(ブログ記事

※オリエント急行殺人事件とワトソン&ホームズは前述の記事の年表には含まれていないのですが、追記という形で記事の有料部分で言及されています。僕が記事を書き始めた後での追記なのでご容赦ください。
(2018年以前のゲームに言及してもまとめなどは変わってないので、やっぱ元年って魅力的なワードが書きたいんだあという思いは強くなりましたが、それは別の話。有料記事ですしキャッチ―さは必要でしょう)

これも、カードに書かれた情報を各プレイヤーが読み込み、どのカードにも書かれていない真相(犯人とか、動機とか)を想像で導くという形式のゲームです。

日本語版がでたものの、ぶっちゃけた話、そんなに売れている気配がないのが残念ですが……。

こちらは対戦式で、もっともはやく正解を回答したプレイヤーが勝利するという形式なので、勝負にこだわるのであれば、やはり、裏取りはそこそこにある程度は妄想レベルの予想で補うということも必要になってきます。
(まあ、こちらも裏取り捜査している感じが楽しいんですが)

僕は2015年にワトソン&ホームズを買ったんですが、正直、当時の感想としては何故いま?でした。

上記の通り、10の怪事件はイスタリ版が売られていたとはいえ、テキストを読んで推理するという形式のゲームは他にはありませんでしたし、近年の推理ゲームの隆盛の理由の1つと思われる、海外での脱出ゲームのヒットと、それを受けての脱出ゲーム的ボードゲームの出版ラッシュは2016年なんですよね。2016年のエッセンでExitとかが発売されています(日本ではマーダーミステリーも盛り上がりの要因の1つですが、これは2018年くらいから)。

脱出ゲーム的なものと形式は違うとはいえ、大きな括りとして『推理、謎解き』の盛り上がりも特にない(もしかしたらボードゲーム以外のところで盛り上がっていて~というのはあったかもですが)状態で、突然でてきているので、脱出ゲーム的ボードゲームの盛り上がりから端を発した推理ゲーム出版ラッシュ以降を整理するという点では、範囲外の作成であることは間違いないです。過去からの流れの中では見落として欲しくないけど、現在から過去を見た時には追跡できない、追跡する必要のないゲームではあります。

この特異点的なワトソン&ホームズという存在の話が次のテーマにつながります。

・スペインで何故か盛り上っている推理ゲーム

推理ゲームが盛り上がっている国はどこか?と言われれば、(形式にこだわらなければ)、マーダーミステリーなら中国や日本でしょうし、脱出ゲーム的なものであればExitシリーズのドイツや、アンロックシリーズのフランスなどがあるかと思います。

が、ここで僕があげるのはスペインです。

最近は減りましたが、たまに色々な国のショップで売られている商品をぼけーっと眺めることがあります。

その国独自のゲームがそれなりの数あるのはドイツ、アメリカ、フランス、ポーランド、日本というところで、その他の国は、まあ、出てはいるけど、数は多くないという印象で、ほとんどローカライズされた他国発のゲームが大半を占めています(データないので主観です。スペインにはネスタ―ゲームズとかあるし、オリジナルゲーム市場が何気に大きいのかもしれませんが詳しい方突っ込みお待ちしております)。

スペインオリジナルのゲームも、そこまで多くないという印象なんですが、何故か、推理テーマのゲームが多いような気は何年か前からしていました。

例えば、
そして誰もいなくなった/ 10 Negritos(2014)  (これはテーマだけが推理もので、実際にはタスク達成型の協力ゲームですが)
ワトソン&ホームズ / Watson & Holmes(2015)
厄介なゲストたち/ Awkward Guests(2016)
・Qシャーロック(2018)

※うちのブログに記事があるものは記事にリンクさせています

スペインオリジナルというわけではないですが、イスタリ版の10の怪事件も英語版より早くスペイン語版がでてます。

たまたまかもしれませんし、推理テーマものが好まれる風土があるのか、何かきっかけがあるのか、単に僕がモノを知らないので多く見えているだけなのかはわかりませんが、推理(テーマ)ゲームがここ数年間で一番熱かったのはスペインだと思っています。
単に殺人や推理のテーマをちょっと被せただけのゲームはそれなりにあるでしょうが、小さい出版社から独自性の高いシステムで出版されてるのが多いなあと。まあ、主観です。

ーー
・おまけ
記事を書くにあたって、主にBGGではありますが調べたことをせっかくなので共有しておきます。興味深い内容もあったので。
いや、ほんとに裏取りやってちゃんと信用に足るものを書こうとしたらめっちゃ大変ですね(=原本まで裏取りしてないので、へーへー程度で)

・そもそもの今回話題にした推理ゲームの源流を調べようとした過程で、ゲームブックについても調べたのですが、ゲームブックという形で発売されたものは1979年のバンタム・ブックスの『きみならどうする?』(Choose Your Own Adventure) シリーズというのがあるようです(wikipediaを参考に書いていますがこれが初とは書かれていません)。
ここで興味深いのが、デジタルゲームのアドベンチャーゲームは、70年代初めには作られていたということなんですね。ゲームブック→デジタルゲームという流れかと思っていたので、意外でした(元祖っぽいアドベンチャーゲームのWikipedia)。
といっても、デジタルゲームの方は個人レベルで初めて作られたのが記録に残っているというだけとも言えるので、センテンスを分割して選択肢で読む先を変えるという形式の本はもっと前にもあったのかもしれませんが。

・他の推理ゲームについても歴史を~と思ったのですが、本腰入れないと無理っぽいので諦めました。どこまで含めるかの話ももちろん、おそらく最初の推理ボードゲームと思われるクルー(クルード)が1949年発売とかなり昔なんで、60年以上を紐解くのは骨だなあと。
メジャータイトルだけでも拾ってみるのは面白いかもしれません。これも古典の推理ゲームであるスルースが1971年と、クルーから結構間が空くんですが、ここら辺はボードゲーム市場的な話や、デザイナーとして活動する人の不在(70年代になるとシド・サクソンやアレックス・ランドルフがでてくる)も大きい気がしており、単純にゲーム名を羅列しても表面的なものになりそうです(それでもないよりはマシですが)。もちろんBGG程度のデータベースで追いかける限界もあります。

・マーダーミステリーの歴史は、意外と古く、「プレイヤー個々人が物語の中の役割を演じる」「プレイヤーそれぞれに背景や何をしていたかの情報ペーパーが配れらて、それに基づいて行動する」という形式だと、1985年に『How to Host a Murder』シリーズというのが発売開始しています(今でも手に入るみたいです。DL販売もあります)。
このシリーズ自体は2003年まで継続して発売されていたみたいです。並行しておそらく似たようなフォーマットで、Murder Mystery Partyというシリーズも1997年から2008年まで継続して新作がでていたようです(推理ゲームのブームを受けてなのか2017年にも新作が出てますが)。
ものをみてないので断定はできませんが、いま流行っているマーダーミステリーの基本要素である「カードを用いたゲーム要素(追加情報)」、「各プレイヤーの情報を集めても解けるわけではない/情報が集まらないような作りになってる」は、中国のマーダーミステリー発なんじゃないのかなあと勝手に思ってます。

・終わりに

先日、ディテクティヴ シーズン1の日本語版が発売されましたし、クロニクル・オブ・クライムの日本語版も控えています。上記の通り、これらは10の怪事件フォロワーなので推理ゲーム好きな方には是非遊んでみて欲しいです。
(クロニクル・オブ・クライムは楽しいところと、コマンド選択式デジタルゲームのコマンド総当たり的になるところがあるので、手放しに褒められるわけでもないんですが)

国内、海外問わず単なる消去法の古き良きシステムを使っていない、プレイアビリティが高く、面白さに直にコンタクトしてくるような新しい推理ゲームがどんどん発売されているのは、遊びきれないのは残念ですが、1ファンとしてとても喜ばしいです。
プロフィール

ひだり

Author:ひだり
川崎市で相方や友人たちとボドゲやってます。

オールタイムベストは、
・グローリー・トゥ・ローマ
・バサリ
・インペリアル
・アフター・ザ・フラッド
・ゴッズプレイグラウンド
・HABA社製品 全般

推理ゲーム好きだけど↑には入ってないという
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連絡先:hidarigray@gmail.com
※当blogはリンクフリーです

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