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シャーロック・ホームズ 10の怪事件/Sherlock Holmes Consulting Detective

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(インスト30分1事件解決まで2時間ほど)

※第一の事件である「武器商殺人事件」を遊んだ様子を書いています。ネタばれには気をつけていますが、勘が良くて、記憶も良い人の場合、実際に遊ぶ際の楽しさを削いでしまうかもしれません。読まれる場合には十分にご注意ください。

【概要】

あなたはヴィクトリア朝時代のロンドンでベーカーストリートイレギュラーズの一員となり、かの名探偵シャーロック・ホームズの事務所に持ち込まれた10の怪事件を解き明かすのだ!

【ルール】

簡単に言ってしまうとゲームブックです。
ゲームブック全盛時代にドイツゲーム大賞も受賞していますが、厳密にいえばボードゲームでもカードゲームでもないです。

1冊の冊子に10の事件が収録されており、各事件は、事件の概要を説明するイントロダクション、ロンドン中の様々な場所を訪れた際に何が起こったかが記されているゲームブック部分、事件に関する質問部分、(袋とじになっている)解答部分で構成されています。

イントロダクションを読んだ後、事件の調査をゲームブック部分で行い、事件を解決した!と思ったら質問に回答、そして答え合わせという流れを10の事件分行います。

イントロダクションは、小説として書かれており、依頼人がホームズの事務所を訪れて、事件の概要や重要な人物等について話をしてくれます。

ゲームブック部分はこのゲームの肝です。
付録として、ロンドンの地図、住所録、タイムズ(新聞)、重要人物一覧がついており、イントロダクションやゲームブック部分で登場した人物や建物で気になるところがあれば、住所録で調べてゲームブック上でそこに向かうというのが基本的な流れになります。

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(通常のゲームブックでいえば、「右に進む 5へ」のようになっている部分が、「リチャードの話が聞きたい⇒住所録で調べるとリチャードの住所は5SW(英字はロンドンの地区名)だ⇒ゲームブック部分の5SW部分を読もう」というようになっています。無論、同じ住所であっても事件が変われば違うことが起こります)

解剖結果が聞ける聖バーソロミュー病院(バーツ)や、情報屋のポーキー・シンウェルなど、どの事件でも重要な話が聞けそうな場所は、捜査の情報源一覧に載っています。

あと、面白いのはタイムズで、各事件の依頼日よりも前の日付部分に関連する情報が載っています。
これはどういうことかというと、1つめの事件でタイムズでも見とくかと3月20日付部分を読んでいた場合、先の事件を調べている時に「あれ?この人の話ってどこかで見たような…。3月20日付のタイムズだ!」となる(かもしれない)わけです。
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(タイムズ)

1冊に複数事件が納められていて、かつ、事件が時系列に沿って発生するから起こりえるわけですが、実際に事件を調べているような感覚が引き起こされて、わくわくします。

ロンドン地図は、まんまロンドン市街の地図になっています。住所録を使わなくても、地図上の建物名と住所からゲームブックの該当ページを調べることもできます。

こうしてゲームブック部分で情報を集め、既に事件は解決できたと判断したならば、各事件の最後に書かれた質問を読み、それに回答します。その後、巻末の袋とじ部分に書かれた解答で答え合わせをし、正解であれば各質問に設定された得点を得ます。
各事件はホームズも同様に調査していたという体になっており、ホームズが事件を解決するために要した手数(訪れたゲームブック上の場所)との差を先ほどの点数から引いたものが最終的な得点になります。

この得点が100点以上であればホームズに勝ったということになります。

・多人数プレイについて
一応、多人数でのプレイ方法もルールには書かれています。
ゲームブック上での行き先を手番のプレイヤーが決定し、行った先に書かれた話を手番のプレイヤーが読み上げる。そうしたら、隣のプレイヤーに手番をうつし、同様に行き先を決め…と事件が解決したと判断するまで繰り返すというものです。


【プレイ内容】

推理小説好きで集まる機会があり、色々調べていた際に、イスタリから再版されるという話を読んで、BGGを見ると、1~6人用とあったので、その集まりの時に使えないかと思い購入しました。
このホームズのゲームブックシリーズは4冊あり、学生時代には全て持っていたという相方が、「複数人で遊べるようなものじゃなかったと思ったけどなあ」と言ってましたが、まあ、そんなに高いものではない(状態にもよりますが、古本屋で買えば1000~2000円程度です)し、面白そうだしと購入しました。

ちなみに、相方は卒業する時に後輩に全て後輩に譲ってしまっており、内容も既に忘れているということだったので、相方とふたりで遊んでみました。

まず、事件に入る前に全体共通のイントロダクション部分があります。黙読だけなら早いのですが、ここはルール通りに相方に読み聞かせます(軽く10分以上は朗読したと思います)。

その後、1つ目の事件である「武器商殺人事件」に取りかかりました。

相方の手番からのスタートで、相方はどうも被害者が残したメモの内容が何を示しているかを追及するようです。では、僕は被害者の死因や犯行現場の様子を調べに行こうと、分担しました。1冊の本を共有して、交代で行き先を決めているだけなのに、相方の調べたこと、僕の調べたことが小説やドラマで2人の捜査官の場面が交互に出てくるかのように進んでいきます。

すると、別々のところを調べていた我々ですが、ある同じ単語が話の中にでてきました。

ひだり探偵と相方探偵の目がきらりと光ります。怪しいです。

ひだり探偵:「では、僕が○○を調べにいくから、相方探偵はそのまま被害者の当日の足取りをおってくれないか」
相方探偵:「わかった。では、気をつけて。モナミ」

ホームズでない探偵が混ざっていますが、それはおいておき、最初の事件と言うこともあってか、次に調べるべきと思われる場所や、事件の背景はわかりやすく、とんとん拍子で捜査は進んで行きました。
しかし、途中、もう解けているような気もするし、これ以上何を調べたらいいのか、よくわからなくなった時がありました。

相方探偵:「うーん。ちょっと行き詰ってる気がする。これってどう調べたらいんだろ」
ひだり探偵:「あ! タイムズ読んでない。ちょっと待ってて。(タイムズを読んで…) あった! ○○○だって!」
相方探偵:「急行するよ!」

そして、捜査も大詰めに。

相方探偵:「この△△ってのが誰かを特定できれば…」
ひだり探偵:「直接捜査線上にはあがってないけど、同じ○○○だし、ここ会いに行ってみよう。おお! 読むよ。『彼は△△で…』だって!」
相方探偵:「そいつだ! あと、たぶんこいつが犯人なんだけど、特定する証拠がないよね…。××が○○できれば…。あ! 最初の頃に取ったメモに○○って書いてある!こうつながるんだ!解けた!」

事件を解決しただろうとふたりは判断して、質問にとりかかります。
質問は事件の真相を答えるパート1と、事件をより深く捜査していればわかるパート2にわかれていましたが、パート2の1つを除いて、全て回答することができ、いざ、答え合わせです。

解答も僕らの回答通りで、パート2の1つを除いて全問正解となり、この時点で120点獲得できました。
しかし、ホームズは4ヶ所訪れただけで解決しているとかいう、酷いインチキ能力で、一方で僕らは22ヶ所訪れていたため、120-(22-4)×5となり、最終得点は30点でしたw。

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(事件解決の決め手になった相方メモ)

【感想】

最高でした!

ゲームブック中に書かれた内容を追っていけば、基本的に解くことはできると思います(事件と関係ないところで知識がいる問題もあるようですが)。
密室トリックを解くような奇抜な発想は必要ありません。ただ、書かれた事実から真相を想像するようなちょっとした推理は必要になります。例えば、「Aさんは犬が好きだったのに、犬を嫌っている描写があるからこの時のAさんはおそらく本人ではない」くらいの推理です(第一の事件のネタばれにはなっていないと思いますが、別の事件でこういう推理がでてくるようでしたらすいません)。

自分で推理ゲームを作った時の経験からも知っているのですが、推理小説というか、推理物が好きな人は、物事を推理するのも好きなのですが、大概、疑似的に捜査のまねごとをするのも大好きです!
このゲームブックでいえば、怪しいと思うところを住所録で調べて訪問したり、新聞を調べて事件に関係のある内容を見つけたりするところです。他にも、証言をもとにタイムスケジュールを作ったり、現場の図を作って移動経路を確かめたり、ちょっとした矛盾を証言間で発見したり、指紋を採取したり等々、推理好きの人が好きな行動はたくさんあります(一部例外ありです)。

ファンタジー風味のゲームブックが受けたのは、“冒険している”感じがしたからだと思いますが、このゲームブックでは“捜査している”感じがすごいあります。このワクワク感だけで十分です。

つまり、捜査があれば実際には難しい問題は必要ないんです。俺は難しい問題を華麗な推理で解きたいんだ!という人もいるでしょうが、そういう人でも実際にやってみれば楽しめる内容かと思います。
今回、僕が遊んだのは1問目だけなので、これから難易度はガンガン上がっていくのかもしれませんが。

このゲームの難点は、非常に楽しいゲームではありますが、あくまでゲームブックなので10回遊んだらもうおしまいという点です。
遊んだ後、5年くらい寝かしておけば、また遊べるようになるかもしれません。

あとは、質問に進むタイミングが“解けたと思ったら”と曖昧なので、実際に質問を読んでみて、「知らないひとのことを聞かれた…」と、明らかにまだ解けていなかったという状況が起こりえることでしょうか。まあ、そうなったら、無理に回答せずに、また捜査に戻ればいいわけです。
厳密にいえば、得点計算上でずるをしたということになりますが、ホームズの回答(というか、回答にいたるまでの訪問場所数)がインチキなので、得点は気にせず、質問を回答できるかを楽しむのがよいと思います。

推理物は好きだけど、ちょっと難易度が高い…というひとは、先に質問を読んでしまうのも良いかと思います。逆に自信があるひとは質問を読んでしまうと楽しさが半減してしまうでしょうが。

やる前は、複数人で遊ぶのはあまりいけてないのでは…と思っていましたが、実際にやってみると、プレイヤー間で発見を共有できますし、協力ゲームとして非常に楽しいです。
ただし、複数人プレイだと文章を読み上げる必要があります。今回は、僕が文章を読み上げ、相方がメモを取る形で進めましたが、1つの事件でも文章量がかなりあるので、文章を読み上げるだけで結構な時間がかかります。メモも僕の言葉からひろうため、読み上げを途中で止めて待ったりしていたので、ひとりでやる場合にはもっと短時間で終わるかと思われます。
無論、僕と相方くらいのずっこけと勘と推理力でという前提にはなりますが。

先の事件に進むに従って、前の事件の時に読んでいたあの新聞の記事が!となるようなので、これから時間を見つけて相方と遊ぶのが楽しみです。

もし、興味をもたれた方がいらっしゃれば、既に絶版なので購入の際には、日本の古本屋を利用されると良いかと思います。

フランス語がわかるのであれば、イスタリのリメイク版もかっこ良いです。

【余談】

このゲームを遊ぶ際に一番の問題になったのは、「解答の袋とじを開けるか?」でした。普通の人の感覚はわからないのですが、新刊本で複数冊手に入るならともかく、絶版本の袋とじを破るなどどう考えてもできないだろう!と悩みました。
(それほど稀覯本というわけではないですが、袋とじ未開封の本は今以上に増えることはもうないのですから)
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まあ、上から覗けば普通に読めたので、未開封のままですみました。

余談ついでに、袋とじ付きでメジャーなのは、『生者と死者』(泡坂妻夫)と『歯と爪』(ビル・S・バリンジャー )でしょうか。『生者と死者』は袋とじを開けると長編小説、開けないと短編小説として読めます。『歯と爪』は袋とじ未開封なら出版社が代金を返金してくれるという本です。
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(長編用と短編用。古本屋で見かけてつい購入してしまった未開封の『歯と爪』)

あと、似たような作りの本として『マイアミ沖殺人事件』(デニス・ホイートリー)も有名です。こちらは、血痕の付いたカーテンや採取された指紋、毛髪、使用済みのマッチなどの実物が付属しており、捜査の雰囲気が存分に味わえます(やったことないので、そのはず!程度ですが)。文庫版は実物ではなく写真になってます。

ちょっとずれますが、『秘文字』(泡坂妻夫)という本もあります。全編暗号で書かれた小説で、暗号を解かないと読めません。相方が本当にたまーに思い出した時に暗号を考えており、相方のライフワークになっていますw。
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(『秘文字』の本文)

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出版当時プレイした者で懐かしく読ませていただきました。
ソーサリーと並んでゲームブック最高峰と呼べるだけでなく、ホームズ物として歴史に残して欲しい、そんなクオリティの作品でした。
ご存知かもしれませんが本作には続編が二冊ありますのでぜひコレクションに加えていただきたい(笑)
「シャーロックホームズの探偵講座」というタイトルでテレビゲーム化もされています。ご参考まで。

Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。
仰るとおり、10の怪事件は傑作ですよね!
海外では去年、フランス版と英語版で挿絵などを変えたものが再版されていますし(さすがに日本語版はでないと思いますが)。
続編二冊も実は購入はしています。当時かなり売れたのか古本でも手に入りやすく助かりました。さらに実はテレビゲームの方を先に知っていました。ゲームブックを見て、どこかで似たようなタイトルを見た覚えが…と気づいた時には驚きました。
テレビゲームの方も遊んで見たいのですが、なかなか難しそうなのが残念です。
プロフィール

ひだり

Author:ひだり
川崎市で相方や友人たちとボドゲやってます。

オールタイムベストは、
・グローリー・トゥ・ローマ
・バサリ
・インペリアル
・アフター・ザ・フラッド
・ゴッズプレイグラウンド
・HABA社製品 全般

推理ゲーム好きだけど↑には入ってないという
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連絡先:hidarigray@gmail.com
※当blogはリンクフリーです

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