プロミストランド/Promised Land

(4人でインスト込み3時間半ほど)
【概要&ルール】
すすめー すすめー ヘブライ人 いきょうとどもを けちらせ
地中海の東岸、今でいうところのエジプト、イスラエル、シリアあたりを舞台に、ヘブライ人と異教徒での戦い、国の興亡をテーマにしたゲームです。プレイヤーはスタート時にヘブライ側、異教徒側を決めますが、別にチームというわけでもなく、個人戦です。ゲームは3つの時代にわかれており、1つの時代ごとに配られたカードから任意のカードを規定数(プレイ人数によって変化)取り、そのカードに書かれた国を操ることになります。
(僕は未プレイですが、同デザイナーのヒストリー・オブ・ザ・ワールドとほぼ同じ形式です。よりざっくり言えばスモールワールドというか)
国を操って課題を達成したり、お金を手に入れたりしつつ、得点に変換していく。そんなゲームです。プレイヤーの立場は神様と言うか、時代を超えて存在する何かのようです。
ゲームは以下の流れで進行します。
1.カード(国)の選択
決められたデッキから数枚ずつカードがプレイヤーに配られ、そこから自分が操る国(カード)を決めます。
2.手番の実施
カードには数字が書かれており、数字の小さいカードを持つ人から手番がきます。手番では以下を行います。
2-1.国のアクション
カードには手番順、国の本拠地、ユニット数、戦争時にふれるダイス数が書かれています。手番がきたら書かれた分のユニットを得て、そのユニットを消費することで以下のアクションを行います。
・攻め込む:隣接する他国のエリアに攻め込みます。攻め込んだ先の国の地形(丘か平地か)によって、振れるダイス数が決まっており、攻め込んだ側はその分のダイスを振り一番高い目を選びます。攻め込まれた側はダイスを1つ振ります。攻め込んだ側の目が上回れば勝利です(同数は敗北)。この時、攻め込んだエリアに都市がある、本拠地であるなど、いくかの条件に該当すると守る側の目に補正がつきます。
この補正が全くない又は補正がマイナスの場合は、振るダイス数に応じてダイスを振らずに無条件勝利することができます(3つなら無条件、2つなら1/2ユニットを消費すれば、1つなら1ユニット消費すれば)。
敗北した場合、続けて攻め込むなら連戦数に応じてプラス補正が攻め込む側につきます。
・ユニットのスタック:通常、1エリアには1ユニット配置しますが、それを2ユニットにします。これで攻められた際にダイス目に補正がつきます。
・都市や神殿を作る:ストックに都市や神殿があれば、自分の国の任意のエリアに都市や神殿を作れます。神殿は都市のあるエリアにしか作れません。
・お金を得る:お金1をもらいます。お金は金銀銅の3種類ありますが、任意のお金が1つもらえます。
・アークを動かす(ユニット消費なし):国の中の任意のエリアにアークを動かします。
2-2.プレイヤーのアクション
プレイヤー数に応じたAP数分、アクションを行います。
・ロイヤルトラックを進める:ロイヤルトラックの次のマスに書かれたコストを支払うことでトラック上のコマを先に進めます。これにより得点と(マスによっては)特殊効果が手に入ります。
・王国トラックを進める:この手番の国のアクションで担当した国が王国トラックの次のマスに書かれた条件(草原エリア2ヶ所以上が国に含まれるなど)を満たしていればコマを先に進めます。これにより得点が手に入ります。
・人物コマの配置/移動:各プレイヤーの神官、商人、農民コマをこの手番の国のエリア内に配置/移動させます。
・お金を得る:お金を1もらいます。
2-3.収入
手番の国に関係なく、ボード上に配置されている神官、商人、農民コマに応じてお金をえます。神官からは金、商人からは銀、農民からは銅が手に入ります。
2-4.アーティファクト購入
ボード上に公開されているアーティファクトを購入します。
アーティファクトは何からの特殊効果(お金を他の種類に両替する、ユニット数を増やすなど)を持っています。ほとんどは一度しか使えません。
3.時代の終わり
全プレイヤーの手元のカードが使い終わったならば、その時代が終わり、アーティファクトの補充などが行われます。ゲームは3つの時代で構成されており、3時代目が終わった時点で所有するアーティファクト、これまでに使ったカード、王国/ロイヤルトラックのコマの場所、盤上にある神官などのコマから点数を得た後、もっとも得点の高いプレイヤーが勝利します。
【プレイ内容】
昨年、一番面白かったボードゲームとしてバラ戦争をあげているのですが、その特徴のひとつとして、「チーム戦、ただし、最終的な勝者はひとり」というのがあります。ちょうどバラ戦争を遊ばせて頂いてすぐくらいにこのゲームのキックスターターが始まり、さっそくバックしていたのですが昨年末に届きました。大変、期待してはいたもののエッセン新作があふれている状態ではなかなか出す機会もなく年をこしてしまい、いつ遊べるかなあと思っていました。
そこに一味さんに遊びますが、どうですかと声をかけていただき、いそいそと出かけていきました。
そういうわけで、いたるさん、一味さん、つなきさん、僕の4人で。一味さん、つなきさんがヘブライ人側、いたるさんと僕が異教徒側です。
いたるさんのインスト後、初期配置をしてみたのですが…、
紫色の異教徒ユニットがボードの半分以上のエリアを占拠しています。これはおかしいのでは?とみんな口にだしたものの、ルールブックを確認してもやはり間違いではないようなのでそのまま開始。一方でヘブライ人はオレンジと黄色の2種類のユニットがあるのですが、それぞれ1エリアずつともうすぐ滅亡しそうです。
とりあえず第1時代に自分が使う国(カード)の選択です。カードに書かれているのはヘブライ人は王様の名前、異教徒は国の名前になっています。カードの内容ではその国がどれくらいのユニット数なのかが重要(ユニット数=アクション数であるため)なのですが、登場順とともにボード外側のトラックに書かれています。
僕の手元にきた4枚のカードは、ユニット数が2~4のカード。4のカードを取るべきなのか?と思いましたが、あえて「弱い」カードを選択しました。カードの中には「弱い」カードがあり、ユニット数は少ないもののゲーム終了時に点数になるのです(ユニット数が多いカード自体は点数にはならない)。
では、まずヘブライ人の国からですねと始めたところ、最初に出てきた国のユニット数は7! 2とか4とかでどちらにしようかと迷っていたのがアホらしいくらいの戦力です。よくよくボードに書かれている今後でてくる国とユニット数を見てみると異教徒側2~4、ヘブライ人側4~7と倍ぐらいの戦力差です。
そして、その戦力差であっというまに蹂躙される異教徒たち。紫の異教徒の国もどんどんせん滅されます。
一応、戦争のルール上、攻撃側は複数のダイスを振れるので大きな目がでやすいとはいえ、同値の場合は防御側の勝ちですし、攻め込まれたエリアがその国の本拠地だったり、都市があれば防御側に補正値がつくため、6を出せば防御側が必勝ですし、5でもまず勝てます。
にも関わらず、いたるさんと僕の異教徒側は全くダイス目がふるわず3以上の目がでません。そのため、ダイス振るの意味ないくらいの勢いでヘブライ人側がエリアを広げていきました。
(防御側に補正がないなどの条件を満たせば攻撃側が自動的に勝てる場合もあります)
これ、うまくできてるなーと思ったのが2つあります。1つ目は王国トラックを進めるために、操作している国の占拠エリアである条件を満たさなければならないのですが、それが「港のあるエリアを1つ占拠していること」だとかでヘブライ人側が戦力が高いとは言ってもある程度侵攻の方向が限られるため、異教徒側の国がいたずらに蹂躙されるというわけでもないこと、2つ目は異教徒側は確かにユニット数も多く、丘のエリアに攻め込む際にはダイスを3つ振れて超強いのですが、平野に攻め込むにはダイスが1つしか振れない設定になっており、そこでもブレーキがかかることです。
王国トラックの序盤に「平野を2つ占拠していること」もあるため、いくら丘のエリアを占拠しても王国トラックを先に進めませんし、農民コマによる銅貨の収入も丘より平野の方が高かったり、商人コマの銀貨の収入も港から多く得られるのに丘にある港は1つしかなかったりで、収入面でヘブライ人は(少なくとも銀貨、銅貨では)異教徒においていかれることになりました。
逆に戦力でもダイス運でも負けていた異教徒側としては、その収入が上回っている間に、お金をうまく使いたいです。お金を使うのは2つで、ロイヤルトラックを進めるか、アーティファクトを購入するかです。どちらも特殊効果+得点という効果ではあるのですが、アーティファクトは相手に使われたくないものを購入すれば邪魔にもなります(ロイヤルトラックはお金さえあれば他人の干渉は関係ありません)。
アーティファクトはざっというと、金銀銅の中から指定されたいずれか1つを3,6,9払えば購入でき、効果と得点は金額に対応しています(例えば、アクション消費なくコマを配置する効果のアーティファクトは3金のものなら1つしか置けず、得点も1点ですが、9金のものならコマは3つ置け、得点も3点です)。
何分初プレイと言うことでどの効果が強いのかはさっぱりでしたが、お金から得点への変換手段だと割り切って、購入上限である毎手番に1つは必ず購入するようにしていました。
先ほどお金は3種類あると書きましたが、金は都市や神殿を建築したエリアに神官コマを配置することでもらえるのですが、他人のコマをどかすには戦争でそのエリアを奪う必要があり、エリアで戦争が起こると都市も神殿も破壊されてしまいます。そして、新たに作るには都市で1ユニット、神殿で2ユニットを消費するため、両方作るには3ユニット必要なのです。初期配置で異教徒は全ての都市と神殿を自分たちの国に置くことができるのですが、ヘブライ人側からの侵攻で破壊され、そして立て直すほどのユニットもなく…ということで金だけは、ゲーム開始して3,4手番後にはヘブライ人側が有利になります。
今回はカード運のせいか、重視した戦術の違いか一味さんが一気にヘブライ人側の国をひとりで大きくし、都市も神殿も独り占めしてしまったため、1手番で7金とかいうかなりぶっとんだ収入を得ていました(他の3人は金銀銅全部あわせてようやく7金いくかいかないかというところ)。

(中盤くらいから緑の一味帝国が誕生します)

(これが伝承や宗教画によって伝えられる一味タワー。国の奥にそびえたつため、破壊するのはかなり困難です)
2時代目に突入してもヘブライ人側の方が圧倒的に戦力は優位と言うか、ソロモン王などのメジャーネームも出てくるなどヘブライ人側は絶好調です。しかし、いくら戦力があるといってもやられるがままでは勝てないので、無謀とは思いつつも一味さんのタワーを崩すべく攻め込みます(というか、国のアクションはあまり選択の余地はなく、ほぼ攻め込むことしかできないのですが)。
僕といたるさんの連続攻撃が功を奏し、一味タワーのひとつを壊すことに成功!そして、次の手番だったつなきさんがつなきタワーを建造しました・・・。なんか、異教徒側報われてなくないか?と思いながらもトップを削れたので良しとします。
みなさんアクションとしては王国トラックを進めるのをかなり優先されていたように見えたのですが、僕は正直、それほど重要視していませんでした。
徐々に達成条件は厳しくなっていくし、1,2マス離されたとしても数点差だし…と思っていたのです。しかし、一味さんが巨大な国を作り上げていたため、ほとんどの条件を達成し、一気に先に先にと進んだ結果、王国トラックだけで10点以上の差がついてしまいました。
さすがにこれはやばいと王国トラックをなんぼかあげるために、一味さんの収入源削りの手を緩めて近場を攻めることなどもしてました。
序盤は初期配置のおかげや、平野が不得意だったおかげで銀銅に関しては収入源を確保できていましたが、中盤をまわるとヘブライ人にめっためたにされるので収入源が削られまくり、僕の当初の方針であるお金を点数に変換する手がまわらなくなっていたのも、王国トラックをのばした理由でもあります。
一味さん絶対優位、異教徒側は息も絶え絶えという状態で、ようやく3時代に入りました。ここで異教徒側にはアッシリアとバビロンが登場し、しかも、このゲームでは同じ国として扱うので、アッシリア&バビロンで合計36ユニットを持つ巨大帝国になります。
あくまで合計ではありますが、3時代の異教徒側のカード9枚のうち、6枚がアッシリア&バビロン、これを4枚ずついたるさんと僕に配って、1枚捨てるということになるので、まあ、少なくとも2枚、大抵は3時代で使う3枚全てがアッシリアかバビロンになることはほぼ確実です。
しかし、かといって好き勝手できるかというとそうでもなく、ヘブライ人だけはこの3時代目終了時にボード上にコマを残せば得点になる(そのコマが得られる収入分だけ得点)ので、コマが置かれているエリアを優先的に攻める必要があるのです。
トップ(と思われる)一味さんのコマはマップ南部にかたまり、アッシリア&バビロンの国はマップ北部です。ダイス運もありますし、限られたユニット数でどこまで一味さん、つなきさんのヘブライ人側のコマを駆逐できるか?と盛り上がりつつ引いたカードは…。

(アッシリア&バビロンが1枚しかねええええ)
アッシリア&バビロンはどのカードでもユニット数が5~7と結構な数を誇るのですが、僕の引いたカードは2~4としょぼいユニット数しかありません。これはやばいと思ったものの、考え方をスパッと変えます。
つまり、一味さんを攻めるのは基本的にいたるさん(と、つなきさん(異教徒同士は戦えませんが、ヘブライ人同士は戦えるのです)に任せて、自分の利益のためだけに動くことにします。
通常、他国を攻めるために使うユニットをすべtお金に変換し、ロイヤルトラックを進めることやアーティファクトの購入に充てました。
しかし、それでもいたるさんの手元に3枚たまったアッシリア&バビロンのユニット数は多く、一味タワー、つなきタワーとも破壊することに成功しました。残す得点源はアークにくっつけて最南端のエリアに荷がした神官コマのみ。
そして、異教徒側で残すは僕といたるさんの手番が1回ずつ。僕によってはようやく出てきたバビロンのカードです。
いたるさん:「アーク、とっちゃいましょうよ」
王国トラックを進める条件のひとつに「アークを持っていること」があり、いたるさんはこの条件のせいでその先に進むことができなくなっていました。僕はアクション数の問題でアークの条件のマスまで進めないので、アークを取ったとしても一味さんを1点削り、いたるさんに最大9点トスすることになります。
うーん、異教徒チームではあるんだけど、結局個人戦だからなあ…。
アークはとらずに自分の得点になるようにだけ動かします!と宣言して、お金を稼いでロイヤルトラックを進めました。
いたるさんは最終手番にアークを取りに行ったものの、一味さんが持つ「この手番、指定したエリアを攻められなくなる」アーティファクトの効果で戦いを止められ(僕が攻めていれば一味さんはそこでこのアーティファクトを使うことになったため、いたるさんがアークを取れていた)、王国トラックはアークの手前でストップ。
途中の金満状態があったので、一味さんがアーティファクトもダントツで持っており、圧勝かと思われましたが、異教徒側は1時代、2時代のユニット数が少ないカードについていた点数がじわじわと効いており、意外と僅差での一味さんの勝利でした。
もう何点差かは忘れましたが、確か、僕も一味さんと数点差、アーク取れていればいたるさんが勝利というくらいだったと思います。

(最終盤面)
【感想】
期待していたのとは若干ゲーム性は違いましたが、期待以上の面白さでした。
僕はヒストリー・オブ・ザ・ワールドは未プレイなのですが、「手番ごとに国を選択して操作する」のが、なんというか、”自分の国”というのがないため、目先の目的の達成だけを考えてサクサクと手軽にプレイできて好印象でした。
今回のプレイが偶然だったのかもしれないのですが、色々と「うまい」作りになっているゲームだなと思いました。
例えば、前半から中盤にかけてはヘブライ人側は大量のユニットを持った国ばかりでてくるのですが、その中でも前半は平野を攻めるのが苦手(ふれるダイスが1つ)で、王国トラックの進みを抑制していたり、逆に異教徒側は序盤のまだ攻め込まれきってない時に、その条件は突破しなければならなかったりしてます。終盤はその反対でアークの条件がストッパーになっているのでヘブライ側はアークを守りきれるかどうかになっていたり。
また、通常、国のアクションでは他国に攻め込むことがメインになり、盤面も派手に動くのでどうしてもそちらに目がいってしまいますが、ユニット数が少ないカード=点数がついてるカードで、しかもユニット数が少なければ少ないほど点があがるので、ボード上の優劣と一致していないところです。大抵のゲームでは救済措置レベルで戦術として使えるものではないことが多いですが、このゲームでは酷い言い方をすれば、自分が頑張らなくてもチームメイトが相手を叩いてくれればよいということもあり、戦術として成り立っているように思いました(ゲーム中、大してユニット数の多くない国ばかり担当していた僕が最後2位になってますし)。
うまく言えないのですが、得点手段が多様とか単純にそういうことではなくて、ゲームの途中展開、最後の得点計算が非常にドラマチックになるような作りになっているように思いました。
ゲーム中に主にやることはドンパチで、最後まで盛り上がるような作りになっているゲームが楽しくないわけがなく。気持ち良く遊ぶことができました。
無論、殴られること自体、気分が悪いという人もいるでしょうから、人は選ぶと思いますが、自分の国という概念はないので多少はマシなんでないかと思いもします。
欠点というか、残念なところとして、おそらく4人が一番面白く、他の人数ではポテンシャルが発揮できなさそうということ(異教徒→ヘブライ人→異教徒とボード上の版図が変わっていくので、奇数人数ではどちらかの勢力に偏りがでるでしょうし、最大の6人にまでなるとゲーム終了までの手番が少なすぎるのではないかと)があります。
残念つながりでもうひとつ。僕が勝手に期待していただけですが、「チーム戦」という意識は非常に低いです。チーム戦なりの何かに期待していると裏切られるかと思います。特にヘブライ人側は味方を殴らないといけない場面もあるのではないかと。異教徒側だけでは止められないことが往々にしてありそうなので。