そして誰もいなくなった/10 Negritos (And Then There Were None)

(インスト込み1時間半ほど)
【概要】
アガサ・クリスティの小説『そして誰もいなくなった』が舞台の協力ゲームです。
小説は、黒人島(※)に招かねれた10人の男女が、童謡「10人の黒人」の歌詞に則ってひとり、またひとりと殺されていくという物語なのですが、ゲームでは小説と同じ10人とともにプレイヤーキャラクターたちも同様に島を訪れており、小説の登場人物たちとともに真犯人を探すというゲームになっています。


(箱絵は黒人島、ボード裏は黒人人形です)
【タイトルに関する余談】
※イギリスで出版された当初のタイトルは『Ten Little Niggers(10人の黒人)』なのですが、アメリカではNiggerが差別的に使われている単語であるということから、『And Then There Were None』に改題され、童謡もTen Little Indiansに、島名もインディアン島に変更されています(10人の黒人も10人のインディアンも実在する童謡)。
イギリス版も後に『And Then There Were None』に改題され、日本でも『そして誰もいなくなった』のタイトルで出版されています。
なのですが、このゲームはスペインの出版社によるものだからか、デザイナーが推理小説マニアなのかはわかりませんが、『10 Negritos (10人の黒人)』というタイトルになっています。
余談の余談ですが、インディアンも差別用語じゃね?という至極当然の話から、最近の版では英米日ともインディアンも使わずにソルジャー(兵隊)に変更されているようです。
【ルール】
ゲームは10ラウンド(10日間)の間に、証拠トークンを9つ集め、かつ、共犯者がいるなら共犯者を当てることが目的です。
1ラウンドは3つのフェイズで構成されており、目的を満たすか10ラウンド経過するまで繰り返します。
1.移動フェイズ
島に招待されている10人の男女の生き残りを1人以上、3人以下に分け、そこに1人以上のプレイヤーキャラを追加したグループを作ります。
そのグループをボード上の探索したい場所に移動させます。
ただし、各場所には移動するために必要なアイテム(鍵だったり、ランタンだったり)が決められており、プレイヤーの手札か、または、グループ内の人物の所持カードからそれらのカードを捨てる必要があります。

(各場所には捨てなければならないアイテムが書かれています。?は任意のアイテム、人のマークは人数分という意味です)
2.調査フェイズ
各グループで移動した場所にある調査トークンを1つずつ裏返すことができます(裏返さなくても良い)。
トークンは、カード補充などのプラス効果や次ラウンド以降の移動制限がつくなどのマイナス効果つきのものなどがありますが、なかには集めることがゲームのクリア目的になっている数字の書かれた証拠トークンと人影が書いてある共犯者トークンが有ります。
証拠トークンはめくるだけでは手に入らず、書かれた数字と丁度になるように手札に書かれた数字を調整して捨てる必要があります。

(こんな感じです)
共犯者トークンは規定数手に入れることで共犯者を指摘できるようになります。
3.イベントフェイズ
グループ内でカードを分配したあと、山札から補充する。
10人の男女のうち誰かひとりが死に、ボード上に新たな調査トークンが置かれます。
※共犯者をゲームに入れると、プレイヤーたちを不利にするカードが登場したり、共犯者がプレイヤーたちを妨害するためにレジスタンス的なこと(選ばれたメンバー全員が肯定カードを選べば成功、ひとりでも(要は共犯者が)反対カードを出していると失敗)をする要素も入ります。
【プレイ内容】
タロ吉さん、一味さん、キノさん、僕の4人で。
共犯者のとこのルールや使うカードを訳し終えてなかった(というかベースゲームも怪しかった)ので共犯者はなし、難易度も前回イージーでやったらえらく簡単だった(そして誰もいなくならなかった)のでハードでスタートしました。
(難易度によって死人の出る早さや証拠トークンの補充スピードが変わります)
調査トークンの置かれた各場所のうち、館内の場所はいずれも鍵がひとつ+移動した人数分の任意のアイテム(アイテム=カードです)+その部屋に関連するアイテム(遊戯室ならビリヤードの玉など)が、館外ならランタンひとつ+人数分の雨合羽と長靴+αが必要です。
同種の絵柄のカード2枚で任意のアイテムとして使用できますが、鍵だけはこの変換で作ることができません。
そんなわけで鍵が重要なのですが人物たちが持っているカードでは鍵は1枚しかありません。ただ、人物たちが所持していて何度でも使えるアイテムにも鍵を持っている人物がいたので、これで2つ。

(毎ラウンド大活躍する無限鍵マン(左の人です))
僕は手札に鍵があったので、それも含めて僕、キノさん、一味さんの3人が鍵を持つ人物+数人を連れて館内の探索を行い、鍵を持っていると手札を捨てなければならない制限のあるタロ吉さんは館外にいくことにしました(プレイヤーキャラクターにはゲームを有利に進める能力と不利になる制限が1つずつ設定されています)。
こうして、館内、館外の探索を行ったのですが、今回のプレイでは鍵のカードがなかなか出てこず苦労しました。
鍵が出ないと館内の探索はできませんが、かといって館外にいくのも雨合羽と長靴が移動した人数分捨てられるので、鍵がでて欲しいんですが…。
鍵を持っていた人物が初日から殺されたりでなかなかうまくいきません。
(人物が殺された場合、自室に遺体を安置しているという設定になり、生きている間に持っていたカードは鍵を使って取りにいかないとその後のゲームでは使うことが出来ません)
まあ、僕の手札には何故か補充の度に鍵が入り、僕ひとりだけ見れば鍵に困ってはいなかったんですが。
前回のゲームから続けて使っている緑の帽子を被ったおじいちゃんのキャラクターと、これまた前回のプレイからよく行動を共にしているウォーグレイブという人物と一緒に館内の部屋を探索しまくります。

(向かって一番右が僕のキャラで、真ん中が仲良しのウォーグレイブさん)
全部で9つ集めればゲームクリアとなる証拠トークンも徐々に見つかり、4日目が終わった時点で見つけなければならない証拠トークンは残り4つ。
しかし、人物たちの人数はスタート時の半分になり次第に使えるカードが減ってきます。調査トークンの中にはカード補充できるものもあり、前回はそれが序盤にたくさんでてかなり楽になったのですが、今回はここまでまったく出ていません。
そんな6日目は鍵を持っているのが無限鍵マンしかおらず、雨合羽&長靴もひと組しか用意できそうになかったので、大半の人物たちには休んでいてもらい、少人数で探索へ。結果、証拠トークンを1つずつ見つけられたのですが、連れて行く人数をけちったせいで手持ちのカードでは獲得に必要な数字を作ることができず、獲得失敗。

(15と6が作れなかったチームへっぽこ)
これで5日間が経過し、ゲームオーバーとなる10日目まで折り返しです。
人物達も当然残りは半分の5人。人物たちが減れば減るほどどんどん苦しくなるのは目に見えていたのでちょっと焦りがでてきました。その日に誰が殺されるかはランダムなので無限鍵マンが死ぬとこのカード状況から考えるに超ピンチです。
このラウンドはさっき獲得に失敗した証拠トークンを取りにいくこと。さっき失敗したぼんくらふたりは別の場所を調べに行き、キノさん、一味さんが代わりに証拠を無事獲得してくださいます。
これで必要な証拠トークンは残りは2つ。
しかも、このラウンドに調べた調査トークンは手札補充のものばかりで一気に全員の手札が裕福に。
この日も無限鍵マンは生き残り、お、これならいけるかも?と思ってたら、あっさり残り2つの証拠トークンも発見&獲得成功で7日目でクリアすることが出来ました。

(上に並んだ人たちは殺された方々です)
【感想】
テーマや設定から推理要素があるゲームだと思われるでしょうが(そして、僕も推理要素があると思っていましたが)、共犯者がプレイヤーの誰かを推理する以外は、まったく推理要素はありません。移動にも証拠トークン獲得にも使用するカードのマネジメントをどう行っていくか、いま見えているカードをどう使って館内、館外を調査するのが効率的かを考えるゲームです。
BGGに「推理ゲームじゃなくてパズル」というような感想がありましたが、その通りだと思います。
パズルやるのも楽しいんですが、このテーマだともったいないなあという気持ちのが大きいです。
協力ゲームとしてみた場合、かなり運の要素が大きく、無限鍵マンがいつ死ぬかだったり、補充されるカードや調査トークンの内容次第であっさりクリアできてしまったり、クリアは出来てもぎりぎりの日程になったりとかなり左右されそうです。
それでも、共犯者なしで遊ぶ分にはかなりぬるめの調整がされており、たぶん共犯者をいれないとほぼ確実にクリアできるのではないかと思われます(細かくルール間違えてるだけかもしれませんが)。
おそらく共犯者を入れることが前提の難易度設定になっている気がします。そんなわけでとっとと共犯者を入れられるようカードの訳を進めようかなと思います。
記事にしたプレイの前にイージーのセットアップで遊んでいるのですが、その時は、3人しか殺されていないのにクリアしてしまいましたし、カード運もよくて困ることもなかったので、ゲーム中は結構退屈でした。正直、あまり面白くなかったです。
協力ゲームはある程度以上の難易度があって、苦しさがないと面白さがでてこないんだなと今更ですが思い至りました。クリアできないだろうという難易度の協力ゲームってかなり多いように思うのですが、「クリアできない。面白くない」という感想ってほとんど見かけないんですよね。確かに。
そう考えるとそして誰もいなくなったを推理要素無しの協力ゲームにしたのはちょっと失敗だったのではないかという気もします。徐々に仲間が死んでいくという状況自体は面白いのですが、終盤、人がある程度死んでいてもなんとかなるようにすると逆に人がたくさんいる序盤はくそぬるくなってることになります。このゲーム、実際、序盤は楽ですし。
誰が死ぬかによって出てくる証拠トークンが変わったり、もちっとテーマに即したプレイヤーを楽しませる仕組みがあればよかったのですが、単にラウンド経過しないと調査トークンが補充されないというシステム上の理由でだらだらと時間を過ごさないとならないというのが結構つらったです。
ここらの不満点もひっくるめて共犯者をいれると払拭できるとよいのですが。
最後に、このゲーム、英語版が出版されるという話が去年くらいからあるので、たぶん近いうちに英語版がでるのではないでしょうか。じゃあ、何故お前は待たずにわざわざスペイン語版を買ったのかというと、英語版はタイトルが『And Then There Were None』になるようなので、こっちのタイトルの方がよかったというアホな理由なんですけど。