横濱紳商伝/YOKOHAMA

(3人でインスト込み2時間、4人でインスト込み3時間半)
【概要&ルール】
横浜カーストというのをご存知だろうか?横浜市は神奈川県全体の2割を占める巨大な市であるがゆえに都市とそうでない場所の差が激しく、また、一般的に”横浜”と聞いて思い浮かべるイメージと合致する場所は一部に集中しているため、同じ横浜市民であってもお前のところは横浜じゃないじゃん?と言われてしまうような地域があったりなかったりするらしく、とりあえず、県外の人は中区と西区が所謂横浜と思っておけばいいらしいです。
ゲームは手番に以下を行い、ゲーム終了条件を満たすまで時計回りに手番を繰り返します。
1.ボード上に部下コマを配置する。配置は部下コマは1エリアに1つずつ計3エリアまでor1エリアだけに2つのどちらかを選びます
2.社長コマを今いるエリアから部下コマのいるエリアを通って移動させる
3.移動先のエリアでアクションを行う。
エリアには、お茶や生糸などのリソースが手に入る場所や、注文書(書かれたリソースを消費すると得点)、特殊能力カードを手に入れる場所などがあります。
そしてエリアでアクションを行う際、そのエリアに置かれている部下コマの数に応じてアクションの効果があがります。リソース類であれば、基本的に部下コマ数が1増えるごとにもらえるリソースも1つずつ増え、注文書など1つしか手に入れることの出来ないものについては選択肢が増えます。
【プレイ内容】
キノさん、一味さん、僕の3人で。
キノさんは初プレイ、一味さんは何回目か、僕は人が遊んでいるのを横で見ていたことだけあります。
その横で見ていた時もそうだったのですが、このゲーム、開始時からできないことはないですし、得点手段と得点までの経路が自由多彩すぎて、初プレイ時には「え?やれることはわかったけど、じゃあ、何やればいいの?」と案外なります。
でも、まあ、リソースは所持数制限ないし、とりあえず最初に1枚もらった注文書を達成して点数もらうためにもモノを集めるとこから始めるかーとまずは適当に茶畑とその周辺に部下コマを配置してスタートしました。
注文書には、お茶、魚、生糸、銅の4種類のリソースの組み合わせが書かれています(「生糸2つ、魚3つ、銅1つ」とか)。ぱっと見た感じではリソースの種類によって得点の高低が決まっているようには思えなかったのですが、入手のし易さに関してはあからさまに差があります。魚やお茶が獲得数=アクション実行時のパワー(※)なのに、生糸はパワーマイナス1個、銅はパワーマイナス2個になっています。
※パワー:アクション実行するエリアにある社長コマ+部下コマ数+自分の建物数(商館orお店)で決まる。この強さでアクションの効果が決まります。
じゃあ、銅を手に入れやすくしといた方が当然いいなと、たまたまゲーム開始時から研究所(特殊能力カードを獲得できる)に並んでいた採掘技術(効果:銅獲得時に+1)のカードを獲得しました。
このゲーム、注文書の達成以外にも教会への寄付や税関へ交易品を持っていくことでも得点できます。
教会や税関はゲーム全体で使用回数の制限があり、ゲーム最後に使った回数の多い順に点数が入るのでこれらのエリアも使いたいところではありますが、1回のアクション効率を上げるにはできるだけ高いパワーでアクションを行う=部下コマを分散させないのが大事だろうと浮気はせずにリソースがもらえるエリア中心に部下を配置してアクションを行っていきます。
で、キノさん、一味さんはどうされていたかというと、前述の税関を使った得点を重視されようとしていたのがキノさん。
交易品は注文書の達成や高パワーでアクションした際にもらえることがあるのですが、それを積極的に税関に持ち込もうとされてました。今回のゲームでは税関はボードの隅にあり(ボードはモジュラータイプで毎回どこにどのエリアがあるのか変わります)、その隣に教会もあったので税関に通おうとされてたキノさんは必然的に教会にも部下コマを置くことになり、キノさんは税関&教会プレイに。
(手番に社長コマの移動エリア数の制限ありませんが、社長の通るエリアには部下コマが1つ以上置かれてなければなりません)

(教会プレイのキノさん)
一味さんは手元の部下コマを増やす斡旋所とお金がもらえる銀行中心に部下コマを配置。さらに1手番に部下コマを最大4エリアにまでおけるようになる特殊能力カード(名前失念)を獲得されて、増やした部下コマを余すことなく配置して高いパワーでアクションを行われていました。
最初にもらえる部下コマ数は全員同じで、1手番における数は僕とキノさんが最大3つ、一味さんが4つ。1手番に一味さんの方が3割ちょっと多くコマを置いていることになりますが、その分手元の部下コマ切れも一味さんのほうが起こりやすく、そこに付け入る隙が…と思っていたのですが、前述の通り、部下コマを増やせる斡旋所で事前にコマを増やされていたこともあってか、「コマが足りねえ!」とはおっしゃるものの上手に立ち回られてコマ切れは(たぶん)なし。
逆に僕たちの方が、コマが足りないからこのターンに置くのは3つじゃなくて2つで…とか言い始める始末で圧倒されました。
ゲーム開始時にランダムに決められる3つの目的カード(10金集めるとか、お店を指定の場所に立てるとかの内容で達成すると得点。さらに最初に達成した人は若干点数が高くなってる)を3つとも最初に達成されてしまって、もう勝ち負けに関しては盤石。
それでも、少しでも点数を上げねばとキノさんはゲーム終了時にボーナス点が入る教会や税関のマジョリティ勝負や特殊能力カードの数字比べに注力され、僕は注文書と特殊能力カードに書かれたマークでのセットコレクションをそろえちゃるでーと頑張ってみました。
「1エリアに2つ部下コマを置いてさらに隣接するエリアに1つコマをおける」という特殊能力カードを手に入れてからは高パワーでのアクション連発で、リソースも沢山手に入れて、よし!と思ったのですが既に終盤ですぐにゲームが終わってしまい十分に活かせませんでした。
結果は数十点差がつけられてやはり一味さんがトップで終了となりました。

(終了時点)
【感想】
(そんなに数やってるわけではないですが)僕が遊んだ国産の長時間ゲームの中では間違いなく一番面白く、完成度も高いゲームでした。国産長時間ゲームの金字塔と今後呼ばれたりするんじゃないでしょうか。
インスト後、さあゲームやるか!となった時にやれることに制限がなさすぎて、そして、目指すべき方向も多岐にわたりすぎて、何やればいいんだ?と途方にくれるのは確かなのですが、最初の1手、本当に最初の1手で部下コマを置きさえすれば、あとは前のターンに配置した部下コマを活用するように…と短期的な目標ができるため、一気にプレイしやすくなります。
じゃあ、あとは手なりにやるだけかと言われると効率よく点を取れる(ように見える)手段や金や部下コマが足りないから補充しないとなどなど数ターン先に達成したい目標に自然と目がいくので、短期、中期、長期(最終的な勝利)みたいな感じでやりたいことがつながっていき、じゃあ、それらを行うにはどうすればいい?と、するするとゲームが回り始めます。
やることが明確になったらなったで、「3つのエリアに1つずつ部下コマを置く」か、「1つのエリアに2つ部下コマを置く」かの二択か、今後のことも考えて布石をうっておくか、それとも、とりあえず目先のアクション効率のためのプレイをするのかと手番アクションの選択肢でうんうん悩めたりと、ほんと隙がありません。
これらに置きたい時におけるよう手元の部下コマがなくならないようにするには部下コマのマネジメントをうまくやらないとならないという点も加えて、「基本的にやりことはできる。やりたいのにできないのはうまいこと配置やマネジメントができなかった自分のせい」という、ゲーム中に発生するストレスがシステム(ゲーム)から与えられるものでなく、自分が原因であるというのは、ほんとうまいこと作られてるなあと思いました(特殊能力カードの出方とかシステムにぶーぶーいう時もありはしますがw)。
自分の能力以上のことを望んだり、どうすればうまくいくんだーと悩まなければ本当にストレスレスに進行するゲームだと思います(この場合のストレスは、ほぼイコール悩ましさなので楽しさでもあるんですけど)。
で、このゲームの恐ろしいところは、どういう手を打ってもその後の手につながる可能性がある作りであるにもかかわらず、結構如実にプレイの上手い下手が出てくるところで、たまにドイツゲームにあるどの手をうつか悩ましいけど超うまいこと調整してあって、どの手を打ってもなんだかんだで接戦になるというようなことがありません。上手い人下手な人でかなりの差が普通につきます。
必要な時に必要なだけ部下コマを用意していて、最後、徐々にやるべきことが絞られて、序盤、中盤ほど部下コマが必要でなくなった時に余っている部下コマは最小限というような打ち回しを目指してやりこむ人もいそうです。ボードがモジュラータイプで毎回構成が変わるので大変そうですけど(逆に言えば毎回ボード構成が変わるからこそ経験の差がまだ出にくいのかもしれません)。
あと驚いたのは同人っぽさのなさです(※良い悪いの話ではないです)。
国産(同人)ゲームの特徴といか魅力ってそのトンガリ具合というかゲームの中心となる1アイディアでぶち抜いた一点突破の作りやアートワークを含めたゲーム全体から感じるちぐはぐさだと思っているのですが、横濱紳商伝はそうでなく、部下コマの配置とそれを使ったアクションというメインシステムを中心に全体が過不足なく、1アイディアの突き抜けを活かしたまままーるくまーるく収めるよう(あまり使いたくない表現ですが)海外の老舗パブリッシャーと同じようにディベロップされているゲームでした。
おもいっきり主観的な話で恐縮なのですが、ハンスやコスモス、ペガサスなどなどのドイツパブリッシャーのゲームと同じく”優しい”ゲームだなあと思いました(あくまでプレイングの話で前述のとおり勝ち負けに関してはうまくプレイできた人とは結構残酷な差がついちゃうんですが)。