をかしや/ Wokashi-ya

(4人でインスト込み1時間XXほど)
【概要&ルール】
いま持ってきて!いま砂糖と求肥が必要だからすぐ持ってきて!持ってきてそこで和菓子にして!そしたら家建てていいから!
プレイヤーは和菓子屋さんになり、材料を買って、それで作った和菓子をお店に卸していきます。
システムとしてはアクションポイント制でエリアマジョリティ、ルート構築、契約達成を行っていくゲームです。
手番には既定のアクションポイントを以下のアクションに割り振って任意の順に任意の回数行います。
・店コマを置く:手元にある自分の店コマをいま自コマがいるマスにおく。自分の家コマが連結することになる場合、つながっているコマ数だけお金を払う。
・移動する:自コマを1マス隣に動かす。移動先に家コマがある場合、家コマを通路にして複数マス移動できる。家コマが連結していれば、その連結している家コマ内を自由に移動できる。
・材料を買う:自コマが材料屋にいる場合、その材料屋で売られている材料を購入する。
・契約を達成する:ボード脇に置かれている契約カードを1枚選び書かれた材料を消費することでその契約カードを獲得します。カードに書かれた届け先に自コマがいる必要があります。
・お金を手に入れる:3金手に入れる
契約カードがある程度ひかれると決算カードがでてきて、決算です。
決算では、ボード上の各エリア(ボードは何マスかごとに区切られてます)にあるプレイヤーの店コマ数を比べ、得点を上位プレイヤーに与えます。
決算が既定回数行われたらゲーム終了で、獲得していた契約カードからの得点をゲーム中の点数に加えて、もっとも点数の高いプレイヤーが勝利します。
【プレイ内容】
たる田さん、しのぽさん、キノさん、僕の4人で。
ボード上に材料屋と届け先は散らばっており、契約達成に向けてなんどもそこに移動することになるため、家コマを配置して、移動しやすくするのは必須だろうと1,2ターン目は家コマの配置にAPを費やしました。
契約達成時に契約カードに書かれている特殊なアクションを使わない限り1マスに配置できる家マスは1つだけなので人に取られる前にさっさと取るのは正解だったのだとは思います。頭からすっぽり抜けてましたが、当然、決算時のエリアマジョリティも視野に入れて配置すべきだったんでしょうが…。
手番が早めで家コマ配置の邪魔をされにくかったキノさんは移動の便利さを重視。ボードの中央に十字型に家コマを配置することに成功します。これで1APで4つの材料屋の間を移動できるようになりました。
他人の家コマを使って移動した場合、持ち主に銀行から1金支払われるので、こんだけ便利なルートなら結構使われてウハウハできでそうです。
その代りといってはなんですが、キノさんが十字ルートを作るために配置した5つの家コマは全て1つのエリアに配置しているため、エリアマジョリティでは、圧倒的に不利になってしまいました。
家コマはゲーム開始時にまとまった数配られ、そのあとは決算時に数個ずつ補充されるという形なんですが、その最初に配られた数のほとんどをキノさんは1つのエリアにぶちこんでしまったわけです。それに対し、真ん中を分断された残りの3人は、ルートを作りつつもその他のエリアに家コマを分散させて決算ではキノさんに負けはしないという形に。

(写真撮ったのは結構終盤ですが中央の十字に置かれた赤いコマがキノさんのルート)
全部で5つあるエリアは中央の1エリアを除いて、5マスずつ、つまり3つ家コマを配置すれば過半数は取れる作りで、中央のみが9マスのエリアになってます。中央にキノさんは5つ配置したので過半数は取れてますが、他エリアは僕、たる田さん、しのぽさんの3人でわけあうことになりました。
4人ともほとんどの家コマを置ききるまで、全く契約達成に向けたアクションをしなかったので、「ん?ん?これでルールあってますよね?」とか、「はじめてから結構経ってるのに、まだ1枚も契約カード使われてないんですけど、家コマ置き終わったら一気にゲームは収束していくんですよね?」とか、超心配になってしまいましたw。
もちろん、そのあとすぐ、家コマ置きが終わってからは契約をどんどん達成していくフェイズにシフトしましたが。
契約カードは、何が出るかは完全にランダム、何枚かが山札の横に並べられて公開されているというよくあるやつなんですが、カードの内容が見えてから、お、これは点数も追加の特殊効果(※)もいいな。よし、とるぞ!とかやってると、その準備にかかるAPはほぼ同じなため、上家に取られてしまいます。(※契約カードは達成時に家をタダでたてられたり、何かしらの材料をもらえたりなど、おまけがついてます)
んじゃ、どうするかというと、あらかじめ材料をある程度買っておいて他人より早く達成できるようにしとくか、他プレイヤーの持っている材料を良く見て、被らないようにするかくらいしかないわけですが、どちらにせよ、新しくめくられたカードに対しては、めくられた直後のプレイヤーが達成しやすい(手を早く打てる)のには変わりないので、手番開始時に周りを見て、自分が一番初めに達成できそうならそれを目指し、ダメならお金をためるなど他プレイヤーが達成して次にめくられる契約カードに備えます。
届け先が同じなら移動にかかるAPを節約して連続達成でき、これが決まると大変気持ちがよかったです。僕はめぐりが悪いのか、みなさんがうまいのか、なかなか1手番に2契約達成はできませんでしたが…。できても追加効果が家を配置できるなのに手元の家コマを使い切っていたりと、なかなかへたっぴな感じでした。
2枚連続達成によるAPの節約を何回かできたり、序盤からきっちりエリアマジョリティ点を取っていたたる田さん、しのぽさんが1,2フィニッシュ。エリアマジョリティ点で上回った分、たる田さんが勝利されました。ルート構築では他3人の上をいっていたキノさんですが、中盤以降は他3人も便利なルートを作ってたり、序盤のエリアマジョリティ点の少なさが響いて伸び悩み、僕は2枚連続達成もあまりできなかったり、他にもAP効率が悪い手を何回かうったのが原因でイマイチ、イマニという感じでした。
【感想】
とても面白かったです。1時間くらいのゲームとして運と考えどころとゲームの手軽さ、サクサクさが僕には適度でした。
契約カードを1手番に複数枚達成できるため、勝ち負けに関してめくり運の影響が若干大きいようにも思いますが、家コマを使った移動の軽快さやお金の入手の容易さから受ける“軽い”という印象とうまくマッチしていて、1時間前後で収束するゲームの運要素としては適度だったり許容範囲内だったり、ひとによって表現は違うでしょうが、良いバランスだと僕は思いました。
アクションポイント制のゲームはやはり、この手番の中で何ができるか何をするかを、こっちがいい、いやいやこうだ、あれ?こちらがいいのかなと色々考えるのが楽しいです。楽しいんですが、あまりにも考えるパターンが多ければ長考につながりますし、かといって、考えることが少なすぎても楽しさが減ってしまいます。
ルート構築+エリアマジョリティ+契約達成と一見複雑に要素が絡んでそうなシステムなのですが、遊んでみるとシステムの構成要素が3つもあるという重さ、プレイのしにくさは感じません。
ゲームのルール上明確にはわけられてはいないのですが、契約達成を行うにあたり、ルートができている(ひとりのプレイヤーの家が隣接して、1移動力で数マス移動できるようになっている)方が断然便利ですし、基本的にルートを作るための家コマは同じマスに2つ以上置けないため先置きする必要があるので、ゲームの流れは、ルート構築フェイズと契約達成フェイズが分かれているように進行します。
まあ、ルール上で明確に分けられていない以上、ルート構築をどこまで続けるかはプレイヤー次第ですし、ルート構築中に契約達成に向けたアクションももちろん自由に行えます。それでも、ルート構築と契約達成のフェイズはゆるーくですが、確実に存在しています。
さらに言えば、ルートを構築するための作業である「家コマを配置する」はエリアマジョリティのための行為でもあるので、ルート構築(エリアマジョリティ)→契約達成ということになり、システムの構成要素はプレイヤーがアクションする際には自然と分割されます。
さらにさらに、ルート構築(エリアマジョリティ)に使用する家コマ数の制限などによっても、悩ましくなりすぎないよう調整されています。
これらが遊びやすさに結びついているのだと思います。
あくまで遊びやすさであって、構成要素の分割がフェイズをわけるなどルール上で明確化されているわけではなく境界をプレイヤー自身が決められるので、ルート構築とエリアマジョリティと契約達成、どれを優先すべきなのかはゲームを通してプレイヤーの選択肢の根底に常に存在し続けています。この要素間の関連の複雑さをプレイヤーの熟練度によって、頭の外に出せたり、中に入れたりできるような作りになっているということです
届け先は3つで材料を売ってる店は5つなんですが、ボードは長方形なので、どうやっても互いの距離を均等に配置できません。正直、この偏りは気持ち悪い作りなんですが、この不平等な作りは、フェイズを明確に分けていないことと同様に、適度にゲームから単調さをなくして、毎手番アクションポイントの消費計画を立てる際に「む、どうしようか?」と思わせるアクセントになっていました。
乱暴ですが、アクションポイント制のゲームなんてゲーム全体のバランスよりも、各手番でアクションポイントをどう効率的に使うかの計画と実行にどこまで楽しさを感じることができるかの方が重要だと僕は思いますし、このちょこちょこ感じる妙な偏りはあって正解なのだと思います。偏りのせいで生じる不平等さは、あまりにも運ゲーだとそれはそれで、ですが、プレイ時間は1時間ちょっとですし、契約カードの得点が最後にまとめて入るので、ゲーム中は、実際には契約達成によって大きな点差がついていても、それほどそこに目は行かないので、まあ、いいかなと。
最後に、このゲームで一番興味深く感じたのはルート構築の部分です。
しのぽさんは、周りからはずーっと間を埋めるように家コマを配置して1APで移動できるようにルートを作ってくれと言われながら、最後まで家コマのかたまりの間が埋めずに、空けっぱなしにしていらっしゃいましたが、別にそれがしのぽさんの不利益になっているか、周りと比べて不利になっているかといわれると、そんなことはなかったと思うんですよね。
移動が不便なとこに行かない、行かなくて済むような契約カードしか達成を狙わないという手を取れば関係なくなるのはもちろんですが、それをしなくても/できなくても、結局ちょっと悪い効率で移動するだけなのは、そこを通る時はみんな同じですし、仮に間を埋めても便利になるのはみんな同じです。
また、今回キノさんがかなり便利なルートを構築されて、みんなに使われていましたが、それで他人より有利になっていたのか?と言われると、どうなのかな?と思ってしまいます。確かに他の人よりも何金かはもらえていたのは確かですが、このゲーム、お金を手に入れようと思えば1APで3金はいつでももらえますし、家コマを使われた時のお金はプレイヤー間での移動ではなく銀行から支払われるなど、お金の扱い、影響が軽いんですよね。
エリアマジョリティに関しても、長いルートを構築しようとすると1エリアにちょっと大目の家コマを配置する羽目になったり、エリアマジョリティ上、不利になるような配置になる場合が結構あります。というか、エリアマジョリティでも有利になって、しかも、ルートとしても優秀みたいなのはなかなか作れないんじゃないかと思います。
つまり、すごいルートを構築するメリットがあまりない気がするのです。得点手段は契約達成と決算時のエリアマジョリティですが、すごいルートをあるプレイヤーが作ることで契約達成が有利になるのは全プレイヤー共通ですし、エリアマジョリティでは前述のとおり、不利になることすらあります。
それでも、このゲームをプレイする時は便利なルートを作ろうとしてしまいますし、(他人よりも点数で上回るということにはつながらないとしても)そのルートを作るという行為、ルートを作るためにどう家を配置すればいいのかを考える行為が楽しいんです。
家コマをエリアマジョリティのために配置するだけでいいのに、ついでにルートがつながるようにもしてしまおうとしてしまうんですよね。
そして、みんながルートを作れば、それを乗り継いでびゅんびゅんと移動できるようになりますし、APを効率的に使うにはどうすればいいのかと考える中でルートを検索するのもこのゲームの楽しさの1つです。
18XXなど、線路敷きのある鉄道ゲームを遊ぶ際に、株の売買や会社の運営といったシステムから提供されている楽しさだけでなく単純にタイルをどう敷くか、どのタイルが自分の敷きたい道にあうのかを色々試すだけで楽しいというのがあるんですが、そういう、(少なくとも一部の人間が)根源的に楽しいと感じる行為をうまく取り入れてるなあと思いました。
しかし、これは楽しいしついついやってしまうのでいいようなものの、家コマをぶつぎりにエリアマジョリティのみを考えた配置にするプレイヤーばかりが集まるという展開ももちろんあり得るわけで、そうなると楽しさは1段下がってしまう、ともすれば、「エリアマジョリティ要素がルート構築やそれによる移動の軽快さを阻害している」という評価をする人も出てくる可能性があったと思うんですが、それでも、家コマをくっつけることでエリアマジョリティでもボーナスが発生するとかにせず、プレイヤーにぶん投げたというのは、素直にすごいなと思います。
まあ、ルート構築(効率の良さを追求する)という行為自体を面白いと感じる人のほうがきっと多いので杞憂なんでしょうけど。