パイプライン / Pipeline

(4人でインスト込み2〜3時間)
【概要&ルール】
パイプ買う→原油買う→精製する→石油売る→パイプ買う…。なんで全部自分でやらなきゃならんのだ!精製はロボットに、売却は経理に任せて、楽に金持ちになりたい!
各プレイヤーがパイプを買って来て自分の前で組み立てて、その長さに応じて石油を精製→価値をあげて売却することでお金(勝利点)を稼いでいくゲームです。
各プレイヤーは手番にワーカーアクション、機械アクションを行います。全プレイヤーが手番を行なったら1ラウンド終了。これを3年分(1年目は8ラウンド。以下、6ラウンド、4ラウンドと減っていきます)行なったらゲーム終了で、一番金を持っていたプレイヤーが勝利します。
ワーカーアクションは以下の7種類から1つを選んで実施します。
・オイルを買う(4種ある市場のうちいずれか1つで)
・契約を得る/借金する
・タンク&パイプを買う
・マシン&パイプを買う
・アップグレードを得る
・政府からパイプを買う
・自前のパイプラインでオイルを精製する。
ワーカーアクションのうち、上記の上から5つはアクションスペースが隣なっており、規定額を払うことで、アクション実施後に隣接するアクションも同手番内に行うことが出来ます。
機械アクションは、自分のパイプライン上にマシンが配置されていれば、規定額を払って、機械に精製アクションを行わせることが出来ます。
・精製について
セットアップ時に、オイルの色ごとに、精製を1段階すすめるために必要なパイプの長さをランダムに決めます。
マシンまたはワーカーによる精製アクションにて長さに応じてオイルを精製することができます。
(タンク上の置き場所が変わります)
・パイプラインについて
パイプタイルはメインボード上、またはメインボード脇に置かれているものを購入できます。一度に複数枚購入することも出来ますが、購入枚数が増えるほど1枚あたりにかかる金額は上がります。
購入したタイルは各プレイヤーの前で、組み合わせて自分だけの精製用のパイプラインを組み立てます。
【プレイ内容】
カヤさん、しゅだっちさん、ハッチさん、僕の4人で。
カヤさん、ハッチさんは初プレイです。
僕は何度目かのプレイですが、実はこれまでマシンの導入タイミングを見誤っており、最後まで手作業で精製し続けるというプレイングしかできていませんでした。
そのため、3年目(4手番しかない)にほぼ何もできず、ゲームの勝ち負け以上に、ゲームに負けた、俺はこのゲームのいいところを引き出してやることができなかった…と非常に悔いが残っていました。
僕:「今回は勝ち負けよりもマシンを早急に置いて、何度も使うことを目的にします!」
と高らかに宣言してスタート。
初プレイの方々から、マシン必須ですかと聞かれますが、僕はこれまで寂しい思いをしてきましたとお伝えしておきました。
パイプラインを作って石油を精製して金儲けするゲームにも拘わらず手元には金と空のタンクしかありません。なので、パイプタイルをまず買ってこないと始まりません。石油も3色あり、どの色の石油を買えばいいかは手元で何色のパイプラインができたかによるので、とにかくまずはパイプです。
しかし、スタートプレイヤーであるしゅだっちさんの1手目はアップグレード。特殊能力獲得です。これも先取りで、しかもその年の間、同じ種類のものが獲得できなくなるので、欲しいのがあるなら良い手かと思います。
しゅだっちさんが獲得されたのは『セカンドアクション実行時にコスト10金を払わなくて良い』もの。前回のプレイでも使われており、かなり便利そうでしたので、今回も取られたようです。
2番手のハッチさんのアクションは借金。
パイプタイルの購入先は2つありますが、安い公営とちょっと高いマシンとかのおまけで買えるものの2つ。
公営のパイプ屋は1回のアクションで最大5枚のタイル購入できますが、初期の手持ち金だと最大枚数は買えないので借金を選択されたようです。前回のプレイの時、同卓された方が初手借金からのタイル大量購入ありだよねと仰っていたのですが、まさにそのムーブです。
続くカヤさんと僕は公営のタイル屋から3枚ずつタイルを買いました。
公営のタイル屋からは複数枚、確かに買えるのですが、最初に買った1枚と隣接しておかれているタイルしか買えないので、先に穴が開くように買われると大量購入できない場合がありそうです。さっきの借金して5枚購入ムーブは結構リスキーかもしれません(手番の状況とかでリスクなくできる場合もありますが)。
今回はそんなこともなく続く2ラウンド目のスタートプレイヤーであるハッチさんは予定通りに5枚購入されてました。
ここからは、パイプ購入→パイプにあった石油購入→精製して売却→パイプやマシンなど自分の得点エンジンに投資…と繰り返していくだけです。
僕の今後のプランですが、とにかくマシンマシンと考えていました。
今回はマシンに関するアップグレードがあり、レベル1でマシン獲得&マシンを手動起動可能、レベル2でマシンの起動費用が15金から5金まで安くなる、レベル3で通常、手番終了前にあるマシンフェイズが手番開始時にも追加(手番中に2回マシン起動できる)というもの。
レベル1の能力はそれほど強くなさそう(アップグレードに係る費用は20金、マシンも20金なので実質的に、手動起動できるとレベル2がとれるようになるの2効果のみです)ですが、今回のテーマはマシンと心中なので早めに取りたいです。
もちろんパイプも長さ=一度により上位の石油に精製できる能力なのでパイプもできる限り欲しいです。
しかし、パイプを整備したいという思いはみんな一緒なのでどんどん場からパイプが消えていきます。
そのため、2年目の頭にパイプは補充されたり、公営の新しい市場が開放されるので、2年目の開始に合わせて金を貯め、早い手番も取り、自分の欲しい形のパイプを一気に集めてしまうというのは十分ありです。
が、前述の通り、僕はできればレベル2のマシンのアップグレード能力を獲得したく、できる限りレベル1のアップグレードは1年目に取っておきたいのです(レベル2を2年目に取るため)。
普通に考えればお金を温存しつつ、1年目の最後手番のアクションで1番手を取るのがいいよなあと思いはしますが…。
今回はさっさとマシン特化になるんだ!と1年目の最後のアクションでアップグレードを購入。これで原油を買う分のお金しか残っていない状態で2年目に突入です(原油は最安値で5~7金、1段階精製するごとに約20金売値があがります。アップグレードやマシンは1つ20金(マシンは徐々に値上がりしますが)、マシンの起動は1回15金です)。

(パイプラインはしょぼいけど、マシン買ったぞ! ※通常はマシンの上にワーカーを配置することは出来ません。そういうアップグレードを事前に取ってます)
2年目の前半、当然のようにみなさんはパイプ購入を優先し、原油から一気に2ライン同時に2段階上の精製レベルまで上げられるくらいにまでパイプラインができてきてます。しかし、僕は金がないので1年目の前半で作った1回の起動で1段階精製できるショボいパイプラインでやりくりするしかありません。
アップグレードでレベル2のマシンのカードが取れさえすれば…と、2,3手番耐えて人力で精製&売却し、ようやくマシン起動です。
マシンが起動できるようになると世界が変わりました。
原油を買ってきた手番の終わりには1段階精製が完了してます。効果としてはしょぼいんですが、それでもワーカーを精製アクションに費やさなくても勝手に精製されてるのはめっちゃ嬉しいです。しかも金はたった5金しかかかってない! これがこのゲームの本領なのか!?(※違います)
これで精製の目途は立ちました。では次は効率よく石油を現金化する方法です。そう、フリーアクションで売却できるオーダーを狙うことにします。
オーダーは石油の精製度合いや色、数は指定されてますが、市場に売った際の最高金額と同じ額で引き取ってくれます。
僕が精製可能なのは青とオレンジの石油。これで達成できるオーダーは…とみていくと幾つかはありますが、タンク数よりも要求されている数が多いため、今のままでは達成できません。
んでは、とタンクを購入。タンク屋で売られているパイプもついでに購入し、これで超ショボかったラインがめっちゃショボいくらいになりました。
ここからゲーム終了までにオーダーを2つ達成し、それなりにうまく回っていた感はあったのですが、ハッチさんの作成された1起動で原油が3段階分精製されるパイプラインがマシンで動く得点エンジンには勝てず。
僕はこれまでのゲーム終了時の時のお金=勝利点の2倍近く稼ぎはしたんですが、2位。ハッチさんが2割くらい僕を上回ってのトップでした。

(僕以外はそれなりに大きいパイプラインが作られてます)


(トップのハッチさんのパイプラインと僕のパイプライン。まあ、これで僕が勝つのもおかしかろうというレベルの差がありますね…)
マシン起動でブイブイ言わせたのは間違いなかったと思うんですが、パイプの組み方が下手以前に購入している数が足りな過ぎたみたいです(売るのを1、2手我慢して、精製段階を1、2段階上げてから売れば手間に対して儲けが、もう少し上がってた思うので、序盤~中盤のパイプ購入がもう少し数できたかもしれません。まあ、欲しいパイプが枯れてたのも確かなんですが)。
しゅだっちさんもマシン導入&長めのパイプラインではあったものの手番の綾が悪く、原油が市場から枯渇してた等、不運がひびいていたようでした。そしてカヤさんは、これまので僕と同じ感じで、マシンがないので終盤やれることが少なすぎて何もできないという状況に陥られてました。悔しいですよね。わかります。
そんなことをいってても、マシン導入した我々も1つも契約(オーダーとは異なる)は取れておらず、完全に死に要素になってるんですよね…。なので、おそらくこのゲームの理想形とデザイナーが想定してると思われる『精製や売却は自動化して、手番にやるのは原油(もしくは精製済の石油)の購入のみ(たまにパイプライン強化はやる)』には全然届いてないんですけどね…。
【感想】
特徴的なシステムなどはありませんが、「シンプルに拡大再生産のエンジンを作る楽しさ」と「積極的に挑んでアクションを圧縮していく楽しさ」のあるゲームです。
そして、これらの根底にお金のマネージメントがあります。序盤はお金が足らず、終盤はお金=勝利点なので使いすぎても…となります。
拡大再生産のエンジン=自分のパイプラインをどう組み立てるかですが、面白さにつながるいくつかの要素で構成されています。
・自分でパイプのつながりを考え、配置するパズル
・パイプタイルの先取り(欲しい絵柄のタイルが取れるかだけでなく、先に手を出せばタイル枚数を大量に取ることもできます)
・オイルの種類が3種あることによる、他プレイヤーとの絡み
・その他、オーダーを同効率的に取るか、アップグレードを絡めた自分の成長プランの組み立て などなど。
とんがっていたり、カタルシスがあるものではありませんが、どうプレイするのが良いのか?をシンプルに考えさせる作りで、『王道』の面白さになっているように思います。
僕が特に好きなのは手番順だったりお金のマネージメント部分です。
パイプタイルは補充が年度の切替時だけなので、基本的には先取りした方が圧倒的に有利です。好きなタイル取れますし、枚数も多く買うことが出来るので。
この「1アクションで枚数を多く買える」というのが効いていて、アクションを効率よくするために1手番で多くのパイプタイルを取りたい=お金が大量にかかる → お金貯めてからいきたい → 他人に先にいかれるのでは? → ええーい、とりあえず欲しいタイルだけ買っちまえーとか。 枚数買えたほうが有利なはずだから我慢しようとか。
1年目、2年目の最後ラウンドでの手番順コントロール、そこに向けてのお金マネジメントが熱いです。
精製もパイプラインの状況によっては、1手番足踏みして手動精製を何回か繰り返すことでより上位のオイルにできる場合があります。その際に、ここまでにお金が欲しいから、本当は足踏みした方がいいんだけど、ちょっと妥協しようとか、アクション効率は良くないから、少なくてもさくっとお金を作ってパイプラインの強化を先にして、その後で足踏みにしようとか、アクションの実行順、効率追求について考えるゲームです。
アクションを圧縮していく部分も、
・隣接アクションの利用による1手番2アクション実施
・マシン設置による精製自動化
・契約やオーダーによる売却アクションの省略
など、システム上で明確に提示されているものをいつ取り入れるのかをちゃんとプレイヤーに考えさせる作りになっていて好みです。
大抵のゲームの場合、選択肢はどれを選んでも大差はなくなるようにバランシングされていて、戦術Aにせよ、戦術Bにせよ、それぞれの戦術間でいい勝負になるようになっていることが多いかと思います(なので、初プレイの場合、俺はこれ、僕はあっちと特に根拠なく、ギャンブルで戦術を選んでもいい勝負になる)。
まあ、たまに思いっきり、強い戦術があって、それを軸に組み立てるというタイプのゲームもありますが(その場合、あまり考えずに戦術をギャンブルで決めると悲惨なことになる)。
パイプラインでは、マシンや契約によるアクションの自動化が選択肢として提示されています。アクションはかからなくなりますが、その代わりにそれなりのコストやリスクがあることはインストの時点でわかります。なので、僕は手作業でやる戦術と自動化する戦術が存在するゲームなのだなと最初思ってしまったのですが、このゲーム、アクション回数を確保することのプライオリティがとんでもなく高く作られており、結果、コストを払い、リスクを抱え込んでどんどん自動化、アクションの圧縮を進めていくゲームになってます。
何回か遊びましたが、最終ラウンド(3年目)になって、「あ、これマシン買ってなかったら話にならんかったわ」となる人が必ず数人います(僕もそうでした)。前回そういう人がいたという話はインスト時にしてますが、それでも、愚直にやろうとしてしまう人がいるわけです。
何故かというと、パイプライン拡大→オイル精製→売却→拡大…という一連の拡大再生産のサイクルにおいて、拡大に十分なお金を残したうえで、なお、自動化にまわせるお金やアクションが確保できるのが、まさに3年目というバランスになってるからです。
その頃には、自動化できてもアクションが足りず、何もできない。もう遅いというわけです。
なので、1年目の終盤か、2年目には(やりたい拡大を諦めるか、やや非効率な精製を行うかして、コストを賄える状態にし)、自動化に踏み出す必要があります(何度か遊びましたが、アクション圧縮されているプレイヤーには勝てる気がしないのです)。
この順調に見える拡大再生産のサイクルをぶった切って、リスクを感じながら前に進む決断をして、収支がプラスになるよう工夫していかなければならないという作りが、このゲームの魅力だと思います。
マシンや契約は同コストで複数取ったり実行できますし、当然、パイプラインを伸ばすことでも精製アクションやパイプ購入アクションの回数を減らせはします。なので、アクション圧縮をどんどんやっていけるんですけど、勝利点=お金ですし、投資をやめるポイントを見極めるのも大事かなと。
ゲームのシステムとしてはすげえ普通というか、目新しいものものなく、シンプルな拡大再生産です。初期資金でエンジン作って、原材料を買ってきて、それを徐々に良いものに強化していくだけのゲームですが、エンジンビルド部分のピュアなプレイヤー間の読み合い、取り合いを作り出している作りと、勝つためにはプレイヤーに挑戦的な前のめりの行動を唆す作りの部分がかなり好みのゲームでした。
ちなみに、パズルはめっちゃ苦手ですが、それでも楽しめますし、勝負には絡めはしました(ちょっと枚数多く取ることにはなりますが)。