厄介なゲストたち/ Awkward Guests

(4人でインスト込み60分ほど)
【概要&ルール】
ウォルトン氏が死体で発見された! 氏は昨夜パーティーを開いており、招待されたゲストたちの中に犯人がいるらしい。ゲストや召使いたちに話を聞いて、犯人を導き出せ!
消去型の推理ゲームです。70枚のカードの情報を突き合せると「犯人」「動機」「凶器」が明らかになるようになっています。
・カードについて


左上に情報力(大きいほどその情報で確定できる範囲が広い)
右上に情報の対象(情報と関連する容疑者名、もしくは場所が書かれてます)
下部にテキストで情報そのものが書かれています(「死体には争った傷はなかった」とか「俺は事件当時はキッチンにいたんだ」とか)。
背景として発言者の絵と、メモ用紙にどうメモを取ればいいかが書かれています。
※メモ用紙が機能的で基本的にはカード通りにメモしていれば大丈夫です
※テキストは何種類かの定型文なので、定型文のパターンと固有名詞(容疑者名とか)を理解していれば大丈夫です。
・事件(山札)作成について
ゲームには約250枚のカードが入っています。そこから、ルールブックまたは公式アプリ上に示されている70枚(カード裏面に番号が振られています)を選ぶことで1つの事件を作ります。
難易度は7段階あり、ルールブック上には40~50種類の組み合わせが書かれています。アプリを使えば、ランダムに事件を選ぶこともできます。
・ゲームの流れについて
ラウンド開始時に手札が規定枚数ずつ全プレイヤーに配られます。
手番は以下の流れで行います。
1.手番プレイヤーは、容疑者と部屋(ベッドルームとかガレージとか)を任意の組み合わせで2つ宣言します。「Aさんとキッチン」とか「AさんとCさん」とか。

(こんな感じ)
2.手番以外のプレイヤーは手札の中で、宣言した要素を含むカードのうち、手番プレイヤーに渡して良いカードに書かれた情報力の合計値をトークンを使って示します。(例:手番プレイヤーの「Aさんとキッチン」宣言に対して、Aさんについて書かれたカードを3枚、キッチンについて書かれたカードを2枚持っていたので、Aさんの情報は隠すことにして、キッチンの2枚のみ提示した)
3.手番以外の全プレイヤーがトークンを提示したら、手番プレイヤーは交換したいプレイヤーに手札から情報力が同じカードを渡して、カードを交換します。
これを全プレイヤーが1度ずつ行ったらラウンド終了です。
ラウンド終了時に、推理するか、次ラウンドも捜査するかの意思表示を行います。推理を選んだプレイヤーは「犯人」「動機」「凶器」(高難易度だと共犯者についても「名前」「動機」が必要です)をメモし、解答を確認します。正解していたら勝利です。
捜査を選択したプレイヤーは任意の枚数のカードを捨て、規定数まで補充した後、次ラウンドに進みます。
【プレイ内容】
俺の名前はヒダリ。ケチなプライベート・アイだ。灰色探偵社という名のちっぽけな探偵事務所の所長ということになっている。社員は俺とたまに転がり込んでくる猫だけだが。
今日は、富豪として地元では知らない者のいないウォルトン氏の殺害事件の調査で、氏の邸宅の調査に訪れている。よほど早く解決したいのか、猫の手でも借りたいのか、たいした実績があるとも思えない俺の事務所にも依頼の電話があったからだ。
どういうことかはわからないが、俺が現場に到着してみると、3人の探偵たちが既に調査を始めているとのことだった。タロ吉探偵、ヒガ探偵、酒元探偵だ。
なるほど。金の有り余っている連中のやることはよくわからないが、どうもこいつらはライバルということらしい。情報はお互いにやり取りしながら、最初に事件の真相をつきとめるか勝負するのだ。真相を突き止めたかどうかに関係なく、金はもらえるということなので俺たちに文句はない。
●捜査初日~2日目 『探偵たち、捜査を始める』
捜査の流れはこうだ。探偵たちは各自、1日かけて聞き込みを行う。その後、探偵全員で顔を突き合わせて情報を交換したいやつは交換するということにした。
※1ラウンド=1日だと解決まで時間が経ちすぎるので、実際は1,2時間くらいのことかと思います。
※ラウンド頭に配られる手札を各自の聞き込み、その後のプレイヤー間での情報のやり取りを情報交換という体にしています。
俺は死体の発見現場である書斎で警官たちに死因について話を聞くとともに、メイドたちに事件当時怪しい人影を見なかったか聞いて回った。
結果、2日目までに凶器については半数以上が捜査対象から外れることになったし、家の中で誰も通っていない場所をいくつか特定することができた。
※手札は完全にランダムに配られるので、狙ったわけではないですが、何故か、書斎のカードと、メイドの証言カードが多めに手元に来ました。

(めっちゃ集まる凶器についてのカード)
この調子で一気に凶器の特定を試みようと、2日目の情報交換で書斎に関する情報はないか?と尋ねてみた。
ヒガ探偵:「ないでーす」
酒元探偵:「3です」
タロ吉探偵:「6です!」
※情報交換では手番プレイヤーが場所と容疑者を任意の組み合わせで2つ指定します。手番以外のプレイヤーは手元に該当の場所/容疑者の情報があれば、交換対象として提示できます。この際、提示する情報の情報力みたいなものがカードの左肩に書かれており、その数字の合計をカードとともに提示します。
手番プレイヤーは合計が同じか上回る情報力のカードを交換対象として提示する必要があります。
この時、手番以外のプレイヤーは該当の場所/容疑者の情報を持っていたとしても、出したくないカードは提示する必要はありません。
ただし、合計の情報力が大きくなるように提示できれば、手番プレイヤーから交換として出てくる情報も情報力の大きいものになります。
思惑通り、大きい情報が手に入った。これで凶器に関してはかなり特定が進んだぞ。
しかし、問題だったのはこのあと。
タロ吉探偵:「M(モロー)とトロフィールーム」
僕:「ありません(書斎の情報しか手元にない!)」
酒元探偵:「5」
ヒガ探偵:「2」
タロ吉探偵:「では、お二人ともと交換で」
書斎の情報の代わりに俺の手持ちの情報を全て渡してしまったため、その後の探偵間の情報のやり取りに参加できなくなってしまったのだ。
タロ吉探偵のあと、ヒガ探偵、酒元探偵も書斎は指定しなかったため、苦々しい思いをしながら二日目は終わった。
●捜査3日目~4日目 『凶器特定!』
3日目の調査でまたまた俺は書斎で鑑識官から話を聞くことができた。
この情報で凶器を特定することができた。

(凶器はベッドルームに置かれていたリボルバー銃だ!)
次に犯人と動機だ。
俺は凶器に関する情報中心に集めていたから、犯人のめぼしは全く立っていない。
しかし、凶器を特定できているので、ここから突き止めることもできそうだ。
凶器は館の中に元々あったものが使用されており、犯人は凶行の直前に凶器を手に入れ、犯行現場である書斎へ移動している。つまり、凶器が元々置かれていた場所を通っている人物のいずれかが犯人だし、逆に言えば、通っていない人物たちは犯人ではないのである。
メイドに話を聞くと、事件当夜、キッチンとベッドルームの間を行き来した容疑者は誰もいなかった等と、部屋に入っていない人物の話をしてくれた。
そういった情報を集めていけば、犯人も特定することが出来そうだ。
相変わらずタロ吉探偵の情報交換での眼力というか、ヒガ探偵、酒元探偵がどういった調査をしてきたのかを見極める目はすさまじく、多くの情報を二人から引き出していた。
俺はみなとの相性が悪いらしく、この情報が欲しいといってもほとんど情報が出てこなかった。
どこにいってもやはり大事なのは人とのコミュニケーション能力ということだろうか。
俺は、犯人の特定に向け、犯人が通った場所として確定しているベッドルームや、手元の少ない情報からバーウィック姉妹に犯人ではと考え始めていた。この姉妹の情報が欲しかった。
何故必要かは伏せつつ、3人の探偵に必要な旨を伝えると、ヒガ探偵が情報量は多くはないが…と言いつつ、1枚のカードを出してきた。
いやいや、今は少しでも情報が欲しい時なのだ、情報量の過多によらず、大変ありがたいと伝えながら、俺の手札からもカードを1枚渡し、交換でカードを受け取った。
そのカードを見た俺の手は思わず震えた。ヒガ探偵から渡された情報は、以前、俺がヒガ探偵へ渡したカードだったからだ。
やられた。見事に俺は何の価値もない情報と、自分が一日聞き込みに回って手に入れた情報を交換してしまったのだ。
全くとんだお人よしだ。
※大げさに書いてますが、まあ、よくあることです。
ラウンド中、手番が後ろだと指定して集めたカードが以前自分が渡したカードだったということにはなりがちです。また、ラウンド終了時に手札を捨てて山札から補充できるのですが、わざと交換用に他プレイヤーが知っている情報の手札にカードを残している人もいますし、逆に捨て札にして情報を埋めてしまう人もいます。
●5日目~6日目 『推理披露!その結果は…?』
俺は焦っていた。リボルバーという凶器は特定できている、そして、バーウィック姉妹が犯人なら動機はこれだという特定もできていたが、もう1歩、犯人だと確定させるにはもう1つ確かな情報が欲しかった。
バーウィック姉妹が犯行時にいたと話しているビリヤードルームからベッドルームへはトロフィールームとガレージを通れば行くことができる。
他の容疑者たちの位置と比べて移動距離も短く、可能性は高そうだ。
しかし…。トロフィールーム周辺での「誰もここを通らなかった」という情報があるのではないかという思いがどうしてもぬぐえなかった。
またはバーウィック姉妹の3つある動機のうちでまだ否定できていない残り1つに関する情報。
バーウィック姉妹以外もまだ可能性としては残っており、単に「凶器のあった部屋まで一番近い」「現時点の情報では犯人でないといえない」という消極的な理由で、犯人であると考えているだけなのだ。
やはり、凶器に絞った情報を集めすぎたのか…? タロ吉探偵が調子よく情報を集めているのも気になる。あと1日捜査をしてもう少し情報を集めるか? そろそろ他の探偵たちも真相に近づいているはずで、先に当てられては報酬を受け取ることはできない。
先に答えられるくらいなら、ギャンブルにでるか…?
※ラウンド間に回答するか、次ラウンドも捜査を続けるのかの意思表示をトークンを使って一斉に行います。表面なら回答、裏面なら操作続行です。
俺の選択は回答。バーウィック姉妹がfamily vendetta(家同士の抗争、復讐)の動機で、リボルバーを使って殺したと推理を書いたのち、解答を確認する。

(字が汚いのはお許しください)
結果は……。不正解。凶器は正解したが、犯人が違っていた。
バーウィック姉妹でなければ、こいつだろうと睨んでいたやつが犯人だった。
残りの探偵たちは捜査を続けるが、俺はここで屋敷をあとにした。
※このあともゲームは続き、タロ吉探偵、ヒガ探偵、酒元探偵も推理を披露しましたが。結果的には全員不正解でしたw
僕と反対で犯人を当てて、凶器を外すという方もいらしたので、カードが偏っていたのかもしれません。
【感想】
消去法を使った推理ゲーム(クルードとか)の中では、情報の示され方、システム等々、含めて現時点で最高のゲームだと思います。
メモ用紙の使い勝手が良いとか、まあ、細かい話もあるんですが、僕がこのゲームを気に入った理由は、
・消去法で消された(残った)情報によって、カードに示されていない情報を推測できること
・犯人自らが話している情報は嘘であること
の2点です。
逆説的な話になりますが、クルードを代表とする普通の消去法の推理ゲームで僕が残念なところに証拠間の関連が全くないことがあります。
犯人、凶器、犯行現場が4種類ずつあるとしたら、単に4×3のマスを1つずつ塗りつぶしていくだけっちゃだけなんですよね。(なので、その塗り潰し方自体が面白かったり、ゲーム性があったりするわけですけど)
厄介なゲストたちは、犯人、動機、凶器を当てるゲームですが、誰それは犯人ではないという直接的な情報はありません。
犯人を当てるには使用人たちの、どの部屋に事件当時何人いたか、どの部屋の間を通ってないかなどの情報と、容疑者たちの事件当時は誰それと一緒にいた、とか、どこそこにいたという情報を組み合わせる必要があります。
仮に上記の情報が手に入らなかったとしても、動機や凶器を特定することによっても犯人を特定する情報の集め方もあります。
所詮はデザイナーが作った枠の中と言ってしまえばその通りなんですが、それでも、このAの情報があるということはXXか!?とか、この凶器ならBが犯人ということはないなとか実際の謎解き的に思考することになりますし、Cが犯人ならベッドルームを通っているはずなのでその場所の情報を集めようなどと情報収集の指針にもなります。
(旧来の消去法の推理ゲームは他人の情報収集のやり方から捜査状況を類推する以外、指針的なものは作りようがないものが多かったと思います)。
そして、この情報間の関連の極め付けが「犯人自身の供述は嘘」であることです。
ふむふむ。AさんはBさんと事件当時一緒にいたのか。あれ? Bさんは事件当時ひとりで図書館にいたって言ってなかったっけ?
使用人も事件当時図書館にいたゲストは1人だけだって言ってる! つまり犯人は…。
これです。
もちろん、犯人役をプレイヤーが務めるタイプの推理ゲームなら普通にあることです。しかし、これを、(指定の山札を作る必要はあるとはいえ)プレイヤー全員が探偵役を務め、かつ、繰り返し遊べるタイプの推理ゲームで実現してるのがすごいと思います。
遊んでみても嘘ついてるやつが1人いるってのは、推理が一筋縄でいかなくなり、面白さに繋がっていますし。
犯人特定の情報収集ルートのひとつになってもいます。
では、文句無しなのかと言えばそうでもありません。
情報交換ルールは、プレイヤー間の情報量を保ちながら、指定の場所や人のものが獲得できるものではありますが、正直、少人数(3人くらい)だと指定の種類の情報を持ってる人がおらず、機能しないラウンドも多々ありますし、「欲しい情報宣言→手札から探す→どれを提示するか決める→手番プレイヤーが交換材料を選ぶ」という流れがもっさりしており、人数が多すぎるとダウンタイムが長くなります。
交換材料として以前もらった情報を返すことで自分だけ情報を得るというプレイングも、やれば楽しいですし、やられた方もげらげら笑ったりもするんですが、終盤、山札がリシャッフルされてからは故意ではなくとも頻発するようになると、まあ、勘弁してくれってなります。
結局、ラウンド間での手札交換がメインの情報獲得手段で、プレイヤー間の交換はおまけ程度に考えた方が良いんかな?と思います。
あればあったで、他の消去法の推理ゲームと同じく、メタ的な他人の捜査状況を類推することもできますし、後手番のプレイヤーは前手番のプレイヤーと同じ対象を宣言すれば、一定量の情報が出てくることは出てくるんですけどね。
最後に細かい話ですが、一部の情報を除けば、カードに示されている通り専用のメモ用紙にチェックするだけで情報の整理ができるというのも、プレイアビリティにつながってますし、最初は、おおおと驚きます。
マーダーミステリーだったり、アンロックやExitなどだったりと、謎解きゲームにも色々バリエーションが増えてきて、明らかに消去法の推理ゲームって地味なんですが、証拠集めてロジカルに解ける、繰り返し遊べる、閃きや知識量の差など関係ないなど、やはり手堅い面白さがあると思います。
候補を消していってるだけでは?感の薄い、謎解いてる、捜査している感の強いゲームもこのゲームやミステリーホームズなど増えてきてますし、ちょっと面白さの種類は違いますがクリプティッドもあります。
まだまだいけるな!進化するな!という気がします。